函館のヒキガエルはどこから来たのか?その謎を推測する

  • 期日:5月6日(金)18時30分〜
  • 場所:土橋自然観察教育林森林展示館
  • 参加:9名

 

北海道のヒキガエルの初出

北海道のヒキガエルの初報告は大正元年に北大の八田先生が函館高等専門学校付近で発見したものだそうです。
八田先生は、このヒキガエルについて本州からのもちこみと考えました。
その後、岡田先生はヒキガエルの亜種エゾヒキガエルとする見解を示しました。
なぜなら、函館で見つかったヒキガエルは、本州のヒキガエルよりもはるかに小さく別種に属するものと考えたからです。

その後、函館のヒキガエルは北海道の固有種エゾヒキガエルであるという説が定着しました。

函館の分布状況は、函館西高が調べており、谷地頭付近が分布の中心として目撃されていましたが、近年見晴公園や赤川水源地でも産卵が見られるようになったようです。
しかし、エゾヒキガエルとされた函館のヒキガエルは、単に身体が小さいだけで、形態的な特徴は本州のアヅマヒキガエルと区別できないことが松井先生の調査でわかってきました。  

斎藤先生たちのチームが採取した道南のヒキガエル

 

ヒキガエルはどこから持ち込まれたのか?

谷地頭あたりに分布の中心があったので、温泉街に持ち込まれたものが広がったのではないかと漠然と言われていました。

ところで、最初にヒキガエルが見つかったのは今の函館西高の付近なので、最初の杉林がある函館山に近く、もしかしたらこれと一緒に持ち込まれたのかもしれないと、斎藤先生は推理しました。

 

それじゃあ函館山の杉はどこから来たのか?

七重村(現七飯町)の倉山卯之助が文化5年に秋田杉を植えていました。
それを函館山へ植えたので、函館山の杉はもともと秋田からきたものだということはわりとはっきりしています。
しかし、樹木にくっついて移入されたのなら、七飯にはガルトネルのブナ林があります。

ガルトネルはプロイセンの貿易商で榎本政権と契約して七飯に大面積の土地を借地しました。
さらにプロイセンの植物などを農地に導入した記録があります。 その一部としてブナの植樹も行っています。

 

エゾヒキガエルは実は外国から輸入されたのかもしれない

七重官園にいたエドウィン・ダンもいろいろな西洋の動植物を輸入しています。
秋田杉にくっついてきた可能性だけでなく、外国からの移入の可能性も浮上してきました。


官園はもともと幕府の御薬園だった

しかし、さらに調べると、七重官園は、幕府の薬草園でした。
栗本鋤雲は幕府の奥医師で、七重村薬園の管理を任されていました。
栗本は佐渡から松や杉を取り寄せて植えたようです。


ところで、七飯にはヒキガエルがいるのか

七飯町ではヒキガエルは2002年に発見されました。
しかし、上藤城〜峠下より大沼側で見られますが、函館側ではみられません。

また、実は、倉山卯之助もちこんだ秋田杉は苗ではなく種で持ってきていますので、秋田杉に付着してヒキガエルが持ち込まれた可能性は消えました。

 

函館のヒキガエルはアヅマヒキガエルと遺伝的に見ると同じ集団

函館のヒキガエルに遺伝的に近いのは千葉県、茨城、神奈川あたりのヒキガエルです。

また、大正元年以前に函館のヒキガエルの記録はないのか?、というと、実は 明治天皇の明治9年の行幸のときの天皇にカエルを使った医学実験を愛宕病院(開拓使医学所)で見せている記録があります。
実験動物としてガマガエル(ヒキガエル)が使われていた!!可能性が浮上しました。

 

開拓使医学所は現在の公会堂付近

開拓使医学所にはエルドリッヂというお雇い外国人がいました。
エルドリッヂはケプロンの助手として来日。
エルドリッヂの購入要請の中にはヒキガエルを要求をした記録はない。

栗本鋤雲は箱館開港以後、医学所の建設を図りました。
そこでは西洋医学の手術の練習が行われていました。
カエルは人間と内臓の配置が似ているので、現在でも解剖の練習にはカエルが利用されます。
 

高松凌雲と函館医学

高松凌雲は栗本と一緒にフランスへ派遣された経緯があります。
フランス在中に大政奉還により帰国、そのまま箱館戦争に参加しました。

幕末から開拓使の時代には箱館には西洋式医学を学んでいる人々がたくさんいました。
外科手術の練習には人間と内臓の配置が似ている大きなヒキガエルが適していたので、函館にヒキガエルが持ち込まれる必然性はあります。

 

函館病院(開拓使医学所)に解剖用に持ち込まれたものが広がった?

七重官園に持ってきたものの中には外国のものばかりではなく日本のものもあります。
まず、東京官園で集められたものが函館に持ち込まれたものもあるようです。
東京官園からアズマヒキガエルが練習用として送られてきたものを、飼育のために池に放たれたのではないかと斎藤先生は推測しました。
そのため、函館病院周辺から函館山へ広がったのではないか?

 

函館のヒキガエルを保護する意味はあるか?

斎藤先生は、「函館で西洋医学を学んだ歴史を示すものとして保護するのはよいが、ばらまくように分布圏が広がるのは問題」と言います。
しっかりと管理して上で飼育するなら良いが、生態系を乱してまで保護するべきものではないと考えられます。

 

質問コーナー

Q:ヒキガエルが北海道に来ることで困ることは?
A:歩行性昆虫がもっとも被害を受ける。カタツムリなども影響を受けると思う。

Q:ロータリークラブはなぜ保護を続けるのか。
A:最近は認識が変わってきたと思う。

Q:自分で繁殖して分布域を広げるスピードはどのくらい。
A:旭川では神居古潭が最初だったが、石狩まで分布している。川の流れに乗って河口まで行っている。

(2016.5.7 石井淳平


好きなこと発表会「ざりがに先生がやってくる!!」

旭川のざりがに先生こと斎藤和範さんが厚沢部町にフィールドワークのために訪れます。 斎藤先生を講師とした講演会と土橋自然観察教育林での観察会を実施します。 連休後半の忙しい中ですが、ご家族でご参加ください。

 

好きなこと発表会「函館のヒキガエルはどこから来たのか?その謎を推測する!!」

  • 5月6日(金)18時30分〜
  • 土橋自然観察教育林森林展示館(小学生もOKです。) *斎藤さんの発表の後、どなたでも自分の好きなことについての発表をできます。 飛び入り参加、ライトニングトークも大歓迎!!

好きなもの探検隊「ざりがに博士と森を歩こう!!」

  • 5月7日(土)10時00分〜11時30分
  • レクの森駐車場集合
  • 小中学生大歓迎!! (学齢前は保護者と一緒におねがいします)
  • 持ち物: 長靴、飲み物、帽子、汚れても良い服装   、虫除け

 

斎藤和範さん

フリーランスキュレーター。専門は生物学/生態学、水生昆虫、ざりがに類、カエル類などの淡水生物や、外来種や頭足類などを研究をしています。 また北海道教育大学旭川分校で博物館学を教え、産業遺産やアイヌ文化、地域の文化財遺産の普及啓発や保存などにも力を入れています。