猪鼻臺は桜花も好く、又白雲が降り積んだ静かな日、遥かに町から仰ぎ見た景も捨て難い趣ではあるが槎枒(牙)たる古松の一枝へ正に一魂の月が蒐まって、幽かに寒川の海が夢の様に浮んで見える景は又格別である。