この絵葉書は、西山さんのお家から発見された貴重な資料です。なんとも微笑ましい絵葉書での宣伝です。

人魚の伝説由来及仁徳寺の結著記
我国大古よりの伝説には人魚を食すれば千年の壽を保すると之を見ても若返りすると申し伝えて居ります。(あなたはいつ迄も若く美しいが人魚でも食べましたか又見ましたか)との俗話もあります然しおそらく當今の人にて食したる人又見たる事ないと思ひます。
此人魚は紀州高野山麓刈萱堂仁徳寺の寶物にして石童丸母公千里御前が日常傍らを放さず崇拝せられたる寶物にて其昔人皇三十三代 推古天皇の御字二十七年四月四日近江国蒲生川にて獲れたるものと同寺の由緒に記されたり大正十三年四月四日迄の年数を算すれば今を去る事實に線三百四十有三年以前に獲れたる古代の寶物にして之れを拝観すれば長命にして無病息災不時の災厄を逸れ若返りするなど惣ての幸福を預かる尚同寺地蔵損は霊験あらたかにして安産の御守殊にこなき人は腹帯を受くれば不思議にも子を授かる故に四季参拝の人絶ゆる事なし世にも不思議なる功徳ありけると

紀州高野山麓学文路 遠照山刈萱堂仁徳寺

其昔聖徳太子仏法お廣めの爲め諸国御巡回遊ばれたる時近江国琵琶湖より人魚現はれ出て対しを伏し拝み願くば聖者大悲を垂れ賜ひ苦痛を助け給へと申せしに対し御憐みありて仏菓を得せしめ給ひ人魚の爲め御長さ三尺の千手観音を刻み給ひて近江の国石場寺村に観音堂を御建立遊ばされ人魚は同寺第一の寶物となされけるが今より三百年以前に同寺は火災にかかり縁起記録のみ残りて人魚は如何になりしか其行動知れずとの事であります尚狭國風土記によれば往年同國小濱に於て人魚を料理せるも人々其姿を見て属する者なし時に七歳計りの女子ありて之を食す然るに不思議なるかな牝女子幾年たちても年老ひず八百年を経過するも若くして十五六才の如し時の帝奇異の事に思し召され禁廷に召されて若狭と名付け給へりこれは時の帝の御長壽を守らんが爲に海より上がりたりしかどもあやしき魚ゆへ下賤の娘に食せされ八百比丘尼とぞ申ける後に神となり其れは若狭一の宮遠敷大明神であります即ち昔より人魚を食すれば千年の長命を保つと申しますは此記事より起こりたる伝説であると思ひます兎に角不思議極まる珍物です。

人魚保存研究會