旧石川組製糸西洋館(きゅういしかわぐみせいしせいようかん)は、1921年(大正10)頃に、当時全国有数の製糸会社だった石川組製糸の創始者・石川幾太郎によって、取引先の外国の貿易商をもてなすための迎賓館として河原町に建てられた、西洋風の木造建築物(1.1)(1.2)(1.4)。
沿革
石川組製糸は、1923年(大正12)の関東大震災による損失、昭和初期の金融恐慌、生糸に替わる化学繊維の誕生などの複合的な要因から業績を悪化させ、1937年(昭和12)に解散した(2)。
2003年(平成15)9月に入間市は前所有者から建物の寄贈を受け、用地を取得(2)。同年12月から、特別公開や撮影への貸出などの活用事業を開始した(2)。
2018年(平成30)頃には、経年劣化により様々な箇所に損傷が見られ、本館の雨漏りの頻発などが問題となっていたことから、2016年(平成28)に国の補正予算として成立した「地方創生拠点整備交付金」を活用して本館屋根の改修工事を実施し、施設の活用に必要な整備を行うことが検討された(2)。
設計・建築
設計は、東京帝国大学で西洋建築を学んだ室岡惣七。建築は、川越の宮大工・関根平蔵が担当した(1.1)。
1921年(大正10)7月7日に上棟、竣工年は1922年 - 1923年(大正11-12)と推定されている(2)。
創建当初の設計図は行方不明となっている(2)。
建築構造
建物
建物は洋風木造建築。2階建ての本館に、平屋建ての別館が接続している(1.1)。
外壁
外壁は本館・別館ともにタイル調の化粧タイル貼(1.1)。別館にはテラゾー(人工石)による柱や長押の和風の意匠が見られる(1.1)。
屋根
屋根は、本館はビップゲーブル(半切妻造)で洋瓦葺(創建時はスレート葺)、別館は寄棟造で桟瓦葺(1.1)。
館内
本館は、館内に、戦後、進駐軍に接収された際に改造された箇所もあるが、全体的な様式は大きく変わっておらず(2)、
- 部屋ごとに特色のある天井の造形や、床の寄木模様、照明器具、
- 玄関ホールの大理石製の暖炉、
- 一木で作られた階段の手すり、
- 海外から取寄せたとみられる特注の調度品
から当時の石川組製糸の繁栄の様子がうかがえる、と評されている(1.1)。
別館は、創建当時から、用途だけでなく間取りなども大きく変更されている(2)。
館庭
館庭は日本庭園が広がっていたとの記録があるが、2018年(平成30)の保存活用計画では、敷地面積から復元は不可能なため、復元にこだわらず、西洋館の雰囲気にあった形で整備するとされている(2)。
文化財指定
本館・別館は、2001年(平成13)11月20日に国の有形文化財(建造物)に登録されている(1.2)。
活用状況
2022年現在、建物の公開のほかに、コンサートや講演会などのイベントの開催、映画やドラマ、ミュージックビデオなどの撮影のロケ地として活用されている(1.4)。
公開状況
2018年8月当時、3月から11月の第2・第4土曜・日曜を中心に一般公開中とされている(1.2)。
2020年10月当時、新型コロナウイルス感染症対策を行った上で一般公開を実施しており、館内見学には事前予約が必要とされている(1.3)。
なお、一般公開は有料(1.5)(2)。絵ハガキや一筆箋、クリアファイルなどの来館記念グッズも販売されている(1.6)。
交通案内
電車・バスの場合
西武池袋線入間市駅北口から徒歩約5分(1.4)。北口の階段を降りて突き当たりを左に。道なりに坂を下ると、左手にある(3)。
車の場合
国道16号河原町交差点を川越方面に向い、350メートル先の歩道橋手前右手にある(3)。
隣接地に駐車場があるものの、台数が少ないため電車・バスの利用を推奨している(1.4)。
リンク
参考資料
-
教育部 博物館、入間市ウェブサイト
- 「旧石川組製糸西洋館の世界」最終更新 2018年(平成30)8月15日
- 「いるまの文化財 > 75・76 旧石川組製糸西洋館(本館・別館)」最終更新 2018年(平成30)8月15日
- 「旧石川組製糸西洋館「新型コロナウイルス感染症対策」について」最終更新 2020年(令和2)10月27日
- 「旧石川組製糸西洋館公開のお知らせ」最終更新 2022年(令和4)7月9日
- 入間市博物館「2022 国登録有形文化財 旧石川組製糸西洋館一般公開(pdf)」2022年(令和4)2月4日
- 「来館記念グッズに「一筆箋」「四君子のクリアファイル」が新登場!」2022年(令和4)3月19日
- 入間市教育委員会「旧石川組製糸西洋館/保存活用計画」2018年(平成30)9月29日
- 環境経済部 商工観光課「景観50選 > 4.西洋館」入間市ウェブサイト、最終更新 2017年3月30日