算額 明治15年(1882)

内田馬次郎を発願主とした額。内容には和算や奉納者名を含めた額。その記名数からも多くの人々の信仰が分かる。

夏目算儀と算額(出典:あうらのかたりべ)

 天保三年三月七日、池上の夏目善右衛門の長男として生まれ、幼い頃から、小林勝栄の門に入り関流の和算を学び、長じてその道の師となりました。

 近隣からの門弟、三百余名がその膝下に学び、その名声は県内広く知れ渡り、その行跡は偉大だったと言われています。

 地区内では、次の箇所に算額が奉納されています。

(年代順)

1.明治四年九月 自宅(現在夏目武氏宅)

  稲荷大明神拝殿内  奉納 夏目善右衛門

2.前記同一物   古宮神社拝殿内

3.明治十五年五月

  下川上愛染堂内   奉納 関流夏目善右衛門々人、内田馬次郎

 総檜製で県下一を誇る大きさがあり、算額数は三間、文字はすべて完全で、一例題を示すと次の通りです。

今盤而如円有外円内容甲円二個、乙円二個、丙円一個 只言乙円経五寸 又日丙円経四寸 甲円経間幾何

答日 甲円経一十二寸

4.明治十六年三月  自宅

 尚、1,2,4は共に判読不可

 以上のように、学問的にも立派な人でしたが、その外に伊勢大廟献祠田並に、古宮神社敷地及び旧星宮村役場用地等を寄附致し、その善行は数えきれない程あります。

 明治四十年六月十五日に死す、行年七十六才 夏目算儀の墓碑は、池上の碧雲山梅岩院に建立されています。

  辞世

 今更に言いおく事のなき後も

   家の道すじ踏みなたがへぞ   算儀