大槌の加工技術を生かしたオリジナル商品を作れば売れるはず

立ち上がれ! ど真ん中・おおつち 浦田克利さん

「利益を出せる売り方に変えねば」商品開発に、新たな販売先の獲得に、あっという間に終わる毎日。
震災前は、回転寿司のネタを中心に、水産物の委託加工業を営んでいた。切り身の規格はミリ単位、どうしても手作業になり、「売っても売っても経営はぎりぎり」
震災から一年、以前の取引先はすでに新たな業者から仕入れている。加工場が再建できたからといって、売れる保証はない。県や財団の助成金、サポーターからの支援を受けてはいるが、いずれ借金は返さなくてはならない。解雇した従業員にも帰ってきてもらいたい。

 

「大槌の加工技術を生かしたオリジナル商品を作れば売れるはず」サポーター制度により、直接お客様の声を聞くことができた。浦田克利さんはそう信じている。

 

避難所生活を続けていた5月末、役場で事業再建のための助成金の説明会が開かれた。その帰り道、「立ち上がれ!ど真ん中・おおつち」立ち上げメンバーの芳賀政和さん、小豆嶋敏明さんと昼ごはんを食べながら、大槌での事業再建を決めた。
それからは申請書と格闘の日々。グループ助成金は3回の挑戦でやっと採択が決まる。中小企業基盤整備機構の支援制度を活用し、仮設工場も完成。県や民間の助成制度にも積極的に応募し、少しずつ設備を整えている。

 

外の世界に目を向けると、三陸牡蠣復興支援プロジェクト「三陸牡蠣オーナー制度」が始まっていた。「そんなやり方もあるのか」浦田さんたちもさっそくサポーターを募った。8月16日、朝日新聞に小さいながらも記事が掲載されると、あっという間に支援者が集まった。あまりの多さに、いったんは募集を中止しようと考えたことも。「あんまりたくさん支援してもらうと、お返しができなくなる」
サポーターからは「お返しが目当てじゃない」「ぜひ再建のために使って」と応援メッセージが寄せられる。
「応援メッセージは何度も何度も読み返した。その度に、頑張らなきゃ」と。

 

後片付けをする必要すらないほどに、作業場も自宅も何も残らなかった。「それでも家族全員無事だったからね」多くのサポーターと家族に支えられながら、大槌の新しい水産加工業のカタチを目指して、浦田さんの挑戦は続く。
「もうすぐ鮭の寒風干(大槌地域独特の新巻きサケ製造法)をネットで直販するからね。『浜娘』の酒かすを使った粕漬けもうまいよ」

 

 

 

 

 

(取材日:2012年3月7日 ネットアクション事務局 前田由美)

 


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