利用者の要求、意見をもとに、放射線量や風向きなどの情報を追加していった

放射線量を可視化するスマートフォン用アプリ「風@福島原発」を開発した石野正剛さん。Hack For Japanのスタッフでもあり、被災地支援に積極的に取り組んできた。

           

石野さんは本業で「行動観察」を実施することがある。情報システムに限らず、対象者の様子を観察し、改善点を明確にして、開発者に伝えることだ。石野さんの目から見ると、各地に建設された仮設住宅は、もう少し入居者のことを考えて建設できなかったものだろうかと悔やまれる。震災後にお子さんが生れたばかりで現地には長く入れなかったが、もしそうでなかったら、仮設住宅に住み込んでニーズや課題を洗い出したかったという。

 

 

風@福島原発

風@福島原発(Android Market)

 

 

今回開発した「風@福島原発」についても、最初は単に、福島原発からの距離を示すような簡単なアプリだったが、利用者や様々な人から「自分の住んでいる地域の放射線量や福島原発からの風向が知りたい」というニーズを得て、政府から公開されている放射線量のデータを読み取ろうと試みた。しかし、放射線量のみならず、官公庁と自治体から公開される情報のほとんどはPDFによる提供に限られていたため、プログラムによって解釈することができなかった。そこで石野さんは、PDFからデータを読み取るプロジェクトを立ち上げて、Hack For Japanの参加者と共に解決し、アプリに多くの地点の放射線量を表示することができた。石野さんにとっては、利用者からの声が機能追加や改善を続けるモチベーションだという。

 

Hack For Japanについては、まず存在を知ってもらうために広報活動を行ってきたが、ややイメージが先行しすぎたと感じている。これまでの活動を総括し、そこから今後何をなすべきかを考えるべきだと思っている。

これからは、被災3県で活動しているHack For Iwate、Hack For Miyagi、Hack For Fukushimaを支えていくことが、Hack For Japanの役割だと考えている。Hack For Japanの活動と他の団体を結び付けていくことや、学生の参加を促し、現地の学生と結びつけることも話し合った。

 

「子どもの頃は、コンピューターなんかを触るより、ボーイスカウト等に参加したほうがいいんじゃないですか?だって、火をおこしたり、ロープを結んだりできるようになるでしょう」と笑いながら話す石野さん。広い視野でものを見て、その中でITができることを見つけていきたいという。技術を否定しないが過大評価もしない。自分たちがこれまで取り組んできたことも冷静に分析している。

 

(取材日:2011年12月21日 ネットアクション事務局 村上文洋)

 
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