協定自治体の支援のありがたさ(茨城県高萩市)

茨城県北部に位置する高萩市。東には太平洋、西には多賀山地、そこに流れる花貫川や関根川が渓谷を作り出している。このまちは、津波被害こそ少なかったものの、東日本大震災で大きな被害を受けたまちのひとつである。高萩市総務部総務課災害復興総合支援室主幹・鈴木享さんに話を聞いた。

 

「津波ですべて流されるということはなかったのですが、建物はかなりの割合で被害を受けました」。鈴木さんの言葉の通り、大震災から1年が経過した今も、市内にはブルーシートが掛けられた住宅が多数見られる。市庁舎も被害を受け、今も仮庁舎で業務にあたっている。
人口約31,000人、世帯数約11,000世帯の高萩市で、5,292棟の建物が被害を受け、発災当初5,000人(人口比約17%)の市民が避難所暮らしを余儀なくされた。「これだけの被害、避難者は想定外でした。当時、防災無線も整備されていなかったため、足を使った広報・情報収集活動と、新聞折り込みでのお知らせで情報伝達を行っていました。情報伝達についての課題を感じました」と、鈴木さんはいう。
高萩市は防災無線の整備に取り組むと同時に、災害FM「たかはぎ災害FM」の開設と全戸への携帯ラジオの無償配布を行った。臨時職員3名を雇用し、災害支援情報や生活情報などを伝えている。昨年11月には全国瞬時警報システム(J-Alert)とも接続し、災害情報を早期に伝える仕組みも確立した。

 

発災当初の食料・水・燃料の不足は深刻だったそうだ。「食料や水についての協定も結んでいましたが、それでも圧倒的に不足しました。また高萩市は車社会ですので、燃料の不足は大きな問題でした。建物を解体するにも燃料がなくて動けない業者が多く、さらに市が指定した仮置場に瓦礫を運ぶのにも燃料がなく動けないという状態でした」
物資も足りない、人も足りないという状況下で、他自治体からの応援が大きな力になったという。「友好都市である埼玉県飯能市からは翌日に支援物資が届きましたし、年明け2月まで職員も派遣していただきました。他にも災害応援協定を結んでいる秋田県仙北市、山形県新庄市、愛知県犬山市、岐阜県海津市、和歌山県田辺市・新宮市からも物的・人的支援をしていただきました。この応援は本当にありがたかったです」
職員数約300人の高萩市。上述のように5,292棟の建物が被害に遭ったため、建物被害調査だけでも人手が足りない状況だ。当然、業務は他にもたくさんある。建築関係の技術者や、ライフライン復旧のための水道関係の技術者など、現場を知る他自治体からの応援は復旧を早く進めるために不可欠なものだった。
これらの自治体とは単に協定を結んでいるだけではなく、防災訓練などを通じた交流があるそうだ。つい先日も、高萩市沿岸住民の避難訓練に飯能市の職員が参加したそうである。単に協定を結ぶだけでなく、顔が見える付き合いがあったことは、非常時の支援をスムーズに行うために有効だったのではないだろうか。

 

「災害のすべてを防ぐことはできません。これだけの被害を前に、行政として迅速な対応ができなかった部分もありました。そこで、どのように減災していくかが大事になると思います。今回の経験を踏まえ、市も防災計画の練り直しなどを行いますが、同時に市民の皆さんが減災に取り組むよう働きかけていくことが重要じゃないでしょうか。市民も含めた全員が減災のために取り組むこと、それが今回のような大災害への大きな備えになると思います」と鈴木さんはいう。

 

(取材日:2012年3月15日 ネットアクション事務局 岩佐大地)

 

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