「待っていてください」。彼は、ワゴン車のドアを必ず開けにくる。そこまでしなくてもと言うと、真意を教えてくれた。それはお客様の安全確保のためなのだそうだ。つまり、ドアを開けるときに、指を戸袋に挟むとか、降りたときに足場が悪くて足首を挫くとか、乗り降りのときに怪我をしやすいのだという。ただ、もてなしているのかと思えば、そんな風に考えていてくれたのかと。http://solmar-ogasawara.com/aboutus.html

 

さらっと見せてくれたこの写真、どんな苦労して撮影したのだろう。

 

 

 

金子タカシさん。小笠原諸島父島のネイチャーガイドだ。筋肉質な体つきが山を歩いていてなんとも頼りがいがあると思ったら、ガイド中、様々な配慮に溢れていることに気付く。歩くスピードを体力や疲労度に会わせて調整してくれている。良い匂いのある植物の種を拾って嗅がせてくれたり、昼飯のとき、テーブルを拭いて、お茶を入れて、おしぼりを用意してくれたりと、その礼儀正さというか爽やかな配慮が気持ちのいい人だった。

 

走っていって、昼食のテーブルを設える

 

勿論、ガイドそのものも、ためになる。自ら撮影したアカガシラカラスバトの写真を見せてくれながら保護区を案内してくれた。この鳥、地面近くに営巣して天敵の猛禽類に対応したため、危険が迫ると固まるように進化していると。だから、人間が放してしまったネコに簡単に捕まってしまうことなど、ことの因果関係の説明が分かりやすい。

 

ウミガメのまねをして砂をかく姿
 

ウミガメの卵の殻

 

浜辺でウミガメの産卵場所を見つけて、卵の殻を拾い上げてみせてくれた。ウミガメになって砂を掘る格好をしてくれるので、産卵の様子が目に浮かぶ。この産卵の位置も偶然を装い、調査済みの場所。

 

 

ホワイトボードにキーワード

 

持ち歩きのホワイトボードに「海洋島」と書いて陸と一度もの繋がったことのない島でどんな風に生物が変化、進化、適応してきたのか。「固有種」が何故産まれたのかと、そのメカニズムを教えてくれた。

 

「ヤロード」と小笠原の人が呼ぶ植物の名前が英語のイエローウッドじゃないかと僕らが気付くのを待つ。連れが気付いて声を出すと自然に褒める。褒められるのが嬉しくて、つい質問に真剣に取り組んでしまう。客の側が饒舌になる。そして、入植者の出身地の方言では、黄色をヤローと発音するといった情報を加えた。自然だけでなく人々が作ってきた文化、戦争の跡、生態系を維持する為の人々の奮闘など、僕らの質問に丁寧に応えてくれるので、あっという間に時間が経ってしまう。もう一度彼のガイドで島を歩きたい。彼はシーカヤックを持っている。天候でツアーの催行を決めるとき、お客様と相談して決めるという。つまり、多少の波でも出かけたいのか、止めたいのか。止めたい理由がお天気にあるときは、キャンセル料が発生しない。なにせ客本意だ。