マシンリーダブルなデータと外部提供のルール作り

 

地理空間データの基盤を産学官で作っていこうと考えている。東京大学空間情報科学研究センターの関本義秀さん。GISの専門家だ。
「小さい頃から川や道の名前を覚えるのが好きでした」という。

 

関本さんは、国や自治体が持っているデータの活用を考えている。
2007年、地理空間データの流通活性化を目的とした「地理空間情報活用推進基本法」が成立。
これにより行政の持つ情報を社会に提供しようという動きが拡大したが、課題もあるという。

 

震災後、関本さんは被災地の情報を分かりやすい形で提供しようと、GoogleMaps上に避難所の情報や、岩手・宮城・福島の3県から毎日公表される通行規制の情報などを掲載した。
しかし、避難所の位置情報がなかったり、通行規制の情報がPDFで提供されたりしていて、作成には手間と時間がかかったという。

 

震災前から官民の持つ情報共有に取り組んできた関本さん。
行政は、都市計画図や地質調査結果、森林関係情報、道路工事情報など、共有することで仕事の効率があがる情報をたくさん持っていると話す。
しかし、その情報の提供形式は、XMLやCSVのような汎用性のあるものとは限らず、PDFだったりHTMLだったり、あるいは個別システムだったりと、行政機関によってバラバラだ。
そうなると、本来、高度な分析に人と時間を割くべき大学が、その元となる情報の収集と整理に多くの時間を割かねばならなくなってしまう。

 

また、「情報を出すルールが整備されていないのも問題」と関本さんはいう。
ルールがないことを理由に情報を提供してくれない行政機関もあるからだ。
情報を出してもらい、使いやすい形に加工し、活用したい人に提供する「コーディネーター」が必要だとも指摘する。

 

関本さんは、自分で作った通行規制情報とは別に、ITSジャパンが行ったプローブ(車の移動)情報の集約・公開状況を周囲に知らせたところ、結果的に東北地方の物流業者に行き着き、現地で役立ち、喜んでもらえたという。
同じように、地図を使って被災地の情報発信をした「sinsai.info」のような取り組みは、個人の力が結集すれば大きな力になる好例だという。
離れた所からでも支援はできるのだ。

 

「行政が保有する情報は宝の山だと思っています。もちろん民間が保有する情報も」
そう話す関本さんは、2011年9月に立ち上げた「社会基盤情報流通推進協議会」をベースに、官民の情報共有に取り組んでいるところだ。
これからの課題は、「マシンリーダブルなデータ」と「外部提供のルール作り」だと、関本さんは語った。行政の持つデータは税金で作られたもの。うまく共有して宝の山を活かしたい。

 

(取材日:2012年2月1日 ネットアクション事務局 雨宮僚)

 

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