地域災害用SNSでの生活情報の交換

 

晋山孝善氏はジェットインターネット株式会社の社長として、1997年から仙南地域を中心にインターネット接続サービスを提供している。仙南は宮城県仙台市の南に接する阿武隈川下流の地域であり、東日本大震災において強い揺れに見舞われた。晋山氏は震災当日、仙南の事務所にいた。地震は長く、時折強い揺れがやってきて、このまま終わらない地震なのではないかとさえ感じた。机のものは全部落ちた。電話が繋がらない。社員は大丈夫か、自宅は大丈夫かと心配になった。その後5日間停電し、情報収集に苦労することになる。

 

地震直後、提供中のインターネットのサービスが気になり、唯一の通信手段となった携帯電話で自社のサービスが無事かどうかを確かめた。その携帯も翌日には圏外となり、そして携帯のバッテリーも切れた。
ライフラインが復旧するまでは、食料や水に対する枯渇感がとても強く、生きていくための生活情報が欲しかった。近所の開いている店からどんどん品物が無くなっていく。報道を見聞きすれば、地震がもたらした被害の全体像はつかめるようになるが、自分たちに必要な情報が無い。必要な情報は、どうやったら明日、水が飲めて、食べ物が食べられるかだ。

 

被災の内容、程度、地域性、地理的条件等と経過日時によって求められる支援の状況は異なる。住民は近所の生活情報に飢えていた。1ヶ月以上ガソリンが手に入らない状況が続いていたがその間は、徒歩や自転車で行ける範囲で、何が売っているか、どこの店が開いているか。長い距離歩いて、お店が閉まっていたり欲しいものが無かったりすると大きな落胆がある。しかも、仕事がある人は、水の配給の大行列に並ぶこともできない。お年寄りが遠い所まで歩いて、水の配給に5時間並んで、ペットボトル2本分の水をもらっている。これはいかん。
そこで、地域の人々が持っている生活情報を投稿し共有しあえる「仙南119」というSNSを立ち上げた。自分たちが生活情報に枯渇していたので、自分たちが欲しいものを作った。仙南119で情報を得て、トイレなどの生活用水として、わき水を汲みに行った人もいた。サイトで得た情報が口コミで伝わってゆく。
津波被害地域以外では、モノの無償供与の支援が必要なのは、ライフラインが復旧し始める前まで。その後は自治体へ無償供与するのではなく、地元の事業者に商品をタダか、安く卸して欲しかった。なぜなら、地元の事業者は被災者に何が求められているかを知っているし、そうすることで経済活動を通じて雇用を維持し復旧復興への足掛かりとすることができたのではと思う。

 

・ジェットインターネット株式会社

http://www.jet.ne.jp/

・宮城県仙南エリア災害用SNS「仙南119」

http://119.jet-net.jp/

 

(取材日:2012年1月20日 ネットアクション事務局 新谷隆)

 

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