◎梅システム◎

みなべ町の梅は、ただ生産量が多いというだけではなく、その生産方法も特徴的である。

みなべ町では400年前から伝わる伝統的な梅の栽培を現在でも続けており、その方法は2015年12月、世界農業遺産に認定された。

急斜面に梅が植えられている

 

⑴山の維持

みなべ町は山に囲まれた地域だが、その山はどれも低い。非常に水はけがよく、もろく崩れやすいのが特徴で、米作りにも向いていない土地だったという。

梅を年貢として納めていた歴史も持つが、山全体を梅林にしてしまうのではなく、「薪炭林」と呼ばれる薪や炭の原料となる森林を残すことによって、山を守り、また梅以外の産業も守ってきた。

山が崩れないよう、しっかりと根をはる木々を残すため、択伐という技術も伝統的に受け継がれている。

 

⑵梅林の維持

薪炭林によって維持されている山には、栄養が溶け込んだ水が多く貯留されている。

これを水源滋養というが、水はけがよく水源確保が難しいみなべにとって、とても重要な役割を果たしている。

栄養をたっぷりと含んだ水は梅にとって良い肥料となり、高品質な梅づくりにもつながっている。

梅は自家受粉できないため、みなべでは二ホンミツバチをつかって受粉を促している。二ホンミツバチは近年生息数が減っており、梅とミツバチの共生も、農業遺産として評価された。

 

⑶生物多様性

山を守り、持続的な里を維持してきたことで、みなべには貴重な生物が多く生息している。

薪炭林や梅林では、ハイタカやオオタカ、山間のため池や水田ではカスミサンショウウオやアカハライモリ、サワガニ、千里の浜ではアカウミガメの産卵が本州で最も確認されるなど、持続可能な農業システムにより総合的に自然環境が守られ、多様な生物の生息が維持されている。

 

 

このように、地域の自然環境を一体として捉え守り続けてきたことで、良質な炭、最高級の梅、持続可能な里山が存在するのである。