使いやすさで繋げるラストワンマイル

とにかく行動して、あがいていく

3.11以後、ICTを活用した支援が多く生まれた。それら多くの支援について横連携を促し、さらなるソーシャルアクションの輪を醸成する場としてICTソーシャルアクションミーティング(以下:ISAM)は設立された。創設者の1人であり、必要物資・支援要求マップ「311HELP.com」を震災直後に立ち上げた株式会社「42」代表取締役・田原大生さんにお話を聞いた。

 

田原さんは言う。「支援要求に特化したことが311HELP.comが多くの人に使われる理由の一つだと思います。でも一番大きな理由は使いやすさじゃないですかね。技術的にはたいしたサイトではないのですが『使いやすい』という感想をよく頂きます」。

 

311HELP.comはマップ上に「支援要請」、「支援意思表明」など内容ごとに色分けされたピンがいくつも立ち、その横で詳細の閲覧・書き込みが出来るというシンプルなサイトだ。ICT支援の課題として「現地に届けるラストワンマイルをどう繋ぐか」が取り上げられる。311HELP.comの場合、それ以前の「サイトを実際に使ってもらうためのラストワンマイル」を使いやすさで繋げていると感じた。実際に使ってもらわないと何の支援にもならないのだから。

 

使いやすいサイトを実現するにあたり、ネットを通じて知り合ったメンバーの存在が大きかったそうだ。「会ったこともない人が、すぐにコードを書いて提供してくれた。ネットによる協力者の広がりとスピード感、そして志と技術を併せ持った人の多さに驚いた」。

 

そんなメンバーと共有している「コアメンバー宣言」には、このような記載がある。

「被災地の立場に立ち、被災地の役に立つ」

「お互いの意思と役割を尊重し、互いの行動に強制を加えない」

「お互いの行動をもってお互いを評価する」

「可能な限りオープンに連絡する」

「異論がある場合、目的に沿って相手の感情にも配慮し、代替案を提案して、合理的で円満な解決方法を探す」

「スムーズな意思決定をするため、代表決定は一旦田原大生が担います」

 

田原さんは、メンバーに頼る一方、任せ過ぎないことで信頼関係を作り、活動を発展させた。特に、最後の代表決定に関する記載は「責任者を明確にしているところがいい」と評価されたという。

 

もう一つ、ネットがもたらしたものがあった。仙台の高校生・末永くんとの出会いだ。自宅は被害を受けたものの祖父の家に移り住むことが出来た末永くんは、「衣食住が満たされた自分に何かできることはないか」と考えていた。一方、東京で311HELP.comを立ち上げた田原さん。二人は、長野に住む田原さんの母・富美子さんの趣味のネットワークを通じて繋がった。場所も世代も超えた繋がりだった。その後、仲間と「Messenger311」を結成した末永くんは、避難所などに行き、現地の支援要請を311HELP.comに書き込む活動を始めた。この高校生の取り組みが注目を集め、数万人のフォロワーがいる著名な方々がTwitterでリツイートすることにより、311HELP.comは大きく広がっていった。

 

「自宅が被害を受けている東北の高校生の思い、そして行動力に本当に感動しました」そう語る田原さんも行動力に溢れた人だ。芸術を学んでいた大学時代「早く現場で働きたい!」と大学を中退し、デザイン会社に入社した。その後一度の転職を経て、今は自らの会社を経営している。幼少時代は、マニュアルと格闘しながらプログラミングにチャレンジする子供だったそうだ。「行動すること、そしてあがくことが大事だと思います」。田原さんのその姿勢が、311HELP.comそしてISAMの活動の背景にはある。

 

ISAMは、冒頭に紹介した連携促進と活動のさらなる発展のほか、支援活動を長期継続していくナレッジの共有をポリシーとして掲げている。「手弁当では続かない、継続する仕組み作りが重要」という問題意識があるからだ。被災地の人々が通常の生活を取り戻すにはまだまだ長い時間がかかる。当然、支援する側も長く支援を継続していく必要がある。

 

(取材日:2012年1月13日 ネットアクション事務局 岩佐大地)

 

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