子どもを元気に、学校ホームページからの情報発信支援

「2012年1月から3月にかけて岩手、宮城、福島県の小中学校を延べ21校訪問しました」と語るのは「ともしびプロジェクト」の代表を務める国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの豊福晋平氏。精力的に被災地を支援し、学校のホームページからの情報発信を手伝う。

 

教育の情報化を専門とし、学校ホームページを使った情報発信などの実践的テーマについて10年以上にわたって研究をしてきた豊福氏。被災した学校に対して何か役立つことができるのではないかと考えていた。思いついたのが、子どもの手で生み出された情報が人と地域と縁をつなぐことができるのではないかという着想だ。実現するには「学校公式ホームページ」を使って、子ども自身が情報発信できれば良いだろうと考えた。「ともしびの輪」ができる。プロジェクト名称を「ともしび」に決めた。既に手探りで学校からの情報発信をしている先進校からのアイデアも取り入れながら企画案を書き上げた。

 

できあがった企画書を持って2011年8月に宮城県の学校を訪問した。豊福氏はその場で企画実現に向けての重要なきっかけを掴むことになる。仙台市と石巻市の小学校に行き、校長先生に会い「学校ホームページで子どもたち自身が力強く復旧復興していく地域の様子を紹介。そして、普段の学校の日常の様子も紹介する。さらに、頻繁に更新する。すると、そうした活動を通じて子どもたちの心のケアにつながる。学校の広報のあり方も改善するはず。私たちはそのお手伝いがしたい」と力説した。

 

豊福氏には一つの大きな不安があった。被災地の学校に行って説明しても「それどころじゃない」という返事が返ってくるのではないか。急がれる復旧作業や授業の正常化に比べれば、情報発信のウェイトはそれほど高いものではないはずだと思っていた。

 

ところが、校長先生からの返事は予想もしないものだった。「確かにそれどころではない学校はある。でも、ともしびプロジェクトの主旨に賛同する学校も多いはず。なぜならば被災地の多くの学校は全国から支援していただいたことに何らかのお返しがしたい。感謝の気持ち込めて、学校の今を伝えることがぜひとも必要だと思っているはず」との返事だった。この言葉は「私にとって大きな心の支えです」と豊福氏は語る。

 

事実、賛同する学校は増え続けている。2011年12月から参加校の募集を始めたところ、津波被害にあったような地域からも参加があった。福島県には個別の学校だけでなく、教育委員会の参加、すなわち市内の小中学校が全て参加するという地域もあった。
学校のホームページを使った情報発信には、初めて実施する初級レベルの状態からスタートし、無理なく日常的に更新できるようになるまで数年かかるのが普通である。そして、豊福氏は学校の進捗レベル、個別のニーズなどに合わせて丁寧に細かくアドバイスをしている。学校の教職員向けの研修会の講師として壇上に立つこともあれば、教室に入って子どもたちに直接語りかけることもある。担当する教職員と一緒に活動プランを作り、取材する子どもをその気にさせる「取材手帳」や「記者腕章」を用意する。
ともしびの活動は被災地の子どもたちの心のケアに直結している。同時に、学校と保護者との信頼関係を育てる。

 

「できれば協賛企業に支援いただき、参加校の子どもたちを大勢集めたワークショップやキャンプを実現したい。被災地の子どもに生涯忘れない楽しい経験をさせてあげたい」という。

 

・「i-learn.jp」 全国学校サイトの活性度を調査研究するページ

http://i-learn.jp/

・ともしびプロジェクト

https://www.facebook.com/tmsb.proj

 

(取材日:2012年3月19日 ネットアクション事務局 新谷隆)

 

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