普段から連絡をとっていたつながりは必ず役に立つのではないか
「東北と比べると被害は限定的かもしれないが、千葉県の被害も大きかった」。こう話すのは、千葉県 県民交流・文化課 交流企画室の中村敏彦室長。旭市の津波被害や香取市の家屋倒壊、そして浦安市や我孫子市の液状化被害など、千葉県各地で被害が発生していた。県民交流・文化課は、こうした災害時にボランティアの受け入れや被災地への活動支援を行っている千葉県災害ボランティアセンターとの連絡調整を業務としており、東日本大震災での経験を踏まえて、今後起こりうる大規模震災への対応を検討している。
千葉県災害ボランティアセンターでは、日本赤十字社千葉県支部と千葉県社会福祉協議会を事務局とした「千葉県災害ボランティアセンター連絡会」を設立し、ボランティア活動を行う団体やボランティア支援を行う団体の協力・連携体制づくりを5年ほど前から行っている。社会福祉協議会は、全国に組織ネットワークを持っており、全国社会福祉協議会のもと、各県・各市町村社会福祉協議会との連携ができていたため、非常に迅速な対応がとれた。
また、千葉県に、平常時からのこのようなネットワーク作りがあったことで、災害発生時においても被災地への支援や関係機関との連絡が円滑になされた、と中村室長はいう。
県内で活動するNPO法人も、今回の災害で東北地方の被災地を中心に支援活動を活発に展開した。また、「NPO法人千葉レスキューサポートバイクは、狭い道路も走行できるバイクの特性を活かして、物資輸送など全国各地の被災地支援活動を行ってきたが、今回の震災では、千葉県災害ボランティアセンターの構成員として活動する一方、被災地である旭市災害ボランティアセンターの立ち上げ、運営に関わり、そのノウハウを最大限に活用して、県内の被災地支援に大いに力を発揮した」、「役所は時に、公平性や制度を重んじるあまり、柔軟に動けない。そういったところをNPO団体が補ってくれた面がある」
ただ、こうした災害支援に課題がなかったわけでもない。「ボランティアセンターに多くのボランティアの方が詰めかけた際に、どこに支援を行えばいいのか、全体を把握する余裕もなく、すぐに対応できなかったことがあった、と聞いている。また、現場のニーズと、ボランティア支援が必ずしもマッチしていない例もあった。平常時から各地域でネットワークを構築しておくべきだった」。こうした問題は、普段から各地域で自治体や地域社会福祉協議会、それに地域のNPO団体とのつながりを持っているかどうかが重要だった。
「ボランティア団体同士の横のつながりも大事。自治体や町内会など地域の支え合いも欠かせない。今回の震災では、地域SNSやツイッターを活用した成功事例もあり、今後こうした手法の活用もありだと思う。多様なコミュニティを重層的に作っておくことが大切だ。コミュニティを作るというのは一朝一夕ではいかないが、なんとかしてコミュニティを作るきっかけづくりしていきたい」と。
ネットワークの重要性を強く主張するには理由がある。「今後、関東で直下型の大震災が起きる可能性は否定できない。人は現時点で統制可能な範囲で計画をつくりがちだが、震災では想定外のことが起きる。想定内の初動マニュアルでは役に立たないかもしれない。コントロールできない状況が起きたらどうするか、連絡がすぐとれない場合はどう動くのか。そうした時に普段から連絡をとっていたつながりは必ず役に立つのではないか」
(取材日:2012年3月14日 ネットアクション事務局 山田勝紀)
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