日本の昔話/雀の宮 について知っていることをぜひ教えてください

民話「雀の宮」

昔々野州の或田舎に、饅頭をまる吞みにして食べるのを、自慢にしている妙な人がありました。悪い者がよくその癖を知っておりまして、針を饅頭の中にそっと入れて置いたのを、知らずに例の通りまる呑みにしたものですから、腹が痛んで苦しんで寝てしまいました。―中略―

雀が一羽、うらの韮畠に来て、しきりに韮の葉を食べていました。.......そのうちに雀のお尻から、韮の葉にくるまって小さな針の折れが落ちたそうです。これは韮の葉を食べれば針が出てくることを、神さまが雀に教えさせて下さったのではないかと思って、試みに自分も韮を沢山食べてみますと、果たして針が出てしまって、痛みがすっかりなくなりました。それで喜んでお社を建てたのが雀の宮で、今でもあの辺の停車場の名になって残っています。(日本の昔話/柳田国男より抜粋)

 

野州の或田舎とは、現在の栃木県宇都宮市

昔話の中でも民話として位置づけされているものは、時代や登場人物の名前、地域などのいづれかが語られているというところで区別されているようで、この「雀の宮」の場合では、地域がはっきりと語られています。野州とは現在の栃木県、下野の国の異名で、古代関東では、毛野および那須と呼ばれる政治権力が存在し、前者の毛野が上下に二分されて、上毛野・下毛野となったといわれているそうです。(Wikipediaを参考)

さらに、上記の民話で示されている通り、雀の宮は実際に建てられており、栃木県河内郡雀宮町(現在栃木県宇都宮市)に「雀宮神社」があります。また、このお話の中に出てくる韮は、栃木県の特産品の一つで、生産量は(2016年時点でも)高知県に次いで全国2位を誇っています。日本における韮(原産地は中国西部)の歴史は大変古く、平安時代には既に栽培されていたということで、古事記には加美良(かみら)、万葉集では久君美良(くくみら)と呼ばれていたということです。下野国という呼ばれ方は、日本の律令制(奈良時代から明治初期まで)に基づいた地方行政区分であることから、この「雀の宮」が語りはじめられた時期は特定できないまでも、栃木県での韮の栽培の深い歴史がうかがえるものです。現代においても栃木県宇都宮では、韮を豊富に使用する餃子が広く愛されているのも、うなづける気がいたします。

 

「2017/2/18 菅原由美」