梅棹忠夫「知的生産の技術」に学ぶ について知っていることをぜひ教えてください

梅棹 忠夫

梅棹忠夫(うめさおただお、1920年6月13日 - 2010年7月3日)理学博士。生態学者、民族学者、情報学者、国立民族学博物館名誉教授、京都大学名誉教授など。著書の「知的生産の技術」は、学問の「やりかた」を整理しているとき、その「やりかた」を湯川秀樹の指摘で「技術」と認識した。何を目的とする技術なのかを考えぬいたら、目的は「知的生産」だと気がつき、この言葉を生み出した。梅棹によると、知的生産とは「頭を働かせて何か新しいことがらをひとにわかるかたちで提出する」ことで、この「ことがら」を「情報」と読み替えている。1960年代に、すでに現在のようなコンピュータを使った知的生産が研究者のみならず、一般の日常生活に入り込むことを予見していた。

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LocalWikiの記事と梅棹のカード

LocalWikiの記事を梅棹のいう知的生産の体系の中に位置付けると、記事の一つ、一つは「カード」となり、全て生産の素材となる場合がある。今ひとつはLocalWikiの記事は、書籍の引用やネット上の他のサイトリンクなどを駆使した知的生産の結果、すなわち「知的生産物」として存在する。これをタグで繋ぎ直すことで、視覚的にも記事の集合体をつくり「新たな情報」を提案することができる。

梅棹は「個人の知的生産」によった説明をしている。カードに「発見」を記入して、集めたり、関連を検討することで、数々の論文の構想を練った。今はそれをLocalWikiのサーバ上で展開することで、カード(記事)の製作者、「知的生産物」(記事)の生産者が、その過程と結果の全てを共有することになる。その昔、一部の研究者や作家しか持たなかった「知的生産」が、LocalWikiのような知識や情報の公開、保存、整理を活用することで、文字の扱える人すべてが、知的生産の手段を共有時代が来てしまった。

たとえば、今までの学校で、国際的な情報、国を統治した側の歴史などは学べたものの、地元の歴史、産業、企業の近世、近代、現代のつながりを学びにくかったかもしれない。これからは教員と学徒の双方が、同じツールで学んだことを共有する場としてもLocalWikiが使われ始める。

 

スマートフォンを通してLocalWikiを「発見の手帳」として使う

梅棹はレオナルドダビンチが手帳を持ち、メモ魔だったことを引用している。手書きの手帳(野帳)じゃないと許してくれない教授たちも多い。実際、野帳にメモするのが一番早い。一方で、スマートフォンに写真を撮ると、写真に位置情報が記される。撮影時刻も記される。そこにコメントをつけて、そのまま回線を通して、クラウドに保存することができる。これをFacebookなどのSNSをクラウドとして使って一時保存してもよい。また、LocalWikiの記事に保存、公開することができる。
手帳に「私たちが手帳に書いたのは『発見』である」と梅棹はいう。メモではなく、小さな論文。考えをまとめて発見や着想記しておく。

LocalWikiを「発見の手帳」として使うかどうか。これは「地元を代表する」気持ちとの折り合いをつけなくてはならないかもしれない。「公的な地元を代表するメディアに、自分の他愛のない発見のメモを残していいのか」という思いが、エディタの中に少なからずある。ところが、誰もが書き換えることができる、編集ができるので、不適切なものは削除の憂き目にあうやもしれない。しかしながら、梅棹が言うように、小さくても、一行であっても「発見は文章にする」を徹底していると。つまり、将来の自分も、記憶を失えば初めてよむ読者として想定して書いていると、記事のタイトルと内容は、再利用がしやすい。「発見の重服」をさけて、足場にして次の「発見」進むためには、自分の発見を読んでくださる奇特な方がいるという想定で、書き残すのでいいのではないだろうか。そのうち、自分で書いたことも忘れて、自分の発見の一読者になり、発見を読んで楽しむなんてことになるやもしれないのだけど。

梅棹の書いた本には、手帳かノートかカードか、どれを使って「発見」や「情報」を保存するか検討を続けた過程が記されている。手帳かカードかノートか悩むことなく、スマートフォンやコンピュータを入り口に、突然やってくる発見を記事に放り込むだけで、あとからタグやリンクを使って編集しひとに提案する「知的生産」を楽しむことになる。
 

 

一つの記事は一つの内容に

梅棹は発見の手帳を京大式カードに発展させるのだけど、一貫するのは、手帳に一ベージ一項目の発見とカードに一枚、一項目の内容としたところで、後から、発見を組み合わせるとき、それぞれが素材としやすいということだ。LocalWikiの記事も、一つの記事にはメッセージを一つにすると書きやすく、読み易い。メッセージを増やしたいときはページを新たに起こして、タグでつなぎ、集めることができる。たとえ、それが厳密にできていなくても、二つ、三つの顔をもった記事を複数のタグ付で、他の記事の素材、情報源として位置づけることは簡単だ。紙の手帳やカードには難しい知恵の共有が、個人の生産段階でも、多くの人の共有とする段階でも同じように機能する。

  京大式カード【Wikimedia より CC BY-SA3.0】