研究結果を実践に生かす

独立行政法人 防災科学技術研究所 社会防災システム研究領域

プロジェクトディレクター 長坂 俊成 氏
 

「震災から3日目、3月14日には宮城県に入って、「eコミュニティ・プラットフォーム」を宮城県沿岸地域の社会福祉協議会とボランティアセンター用のグループウェアとして使ってもらいました。実はこれ、もともと3月16日に仙台で宮城県内の社会福祉協議会を対象とした災害ボランティアセンターの情報発信等の説明会を予定していたもので、それをそのまま活用。次に、被災自治体の情報支援のため、陸前高田、大槌、大船渡、気仙沼、と、庁舎等の被害が大きく首都圏から地理的に距離があって支援が入りにくいところから順に展開しました」

 

 

説明会とおっしゃっているのは、防災科学技術研究所が国の社会還元加速プロジェクトとして取り組んでいる「災害リスク情報プラットフォーム」の実証実験の説明会のこと。同研究所が開発した「eコミュニティ・プラットフォーム」の防災や災害対策分野での普及促進のための実証実験として準備していたところ、東日本大震災が発生し、そのまま実践的に活用しようということでできたのが、「東日本大震災協働情報プラットフォーム」だ。活動のスピード感は、同サイトのお知らせを見れば歴然。

 

同研究所、その名前からしてほとんどの人は、こうした取組が本来の役割と思うだろう。しかし本来は、研究の成果を普及するところまでが同研究所の役割。

 

※同研究所は、研究開発を担う独立行政法人のため、国の中央防災会議の指定公共機関として地震観測網を保守する業務を除き、原則、国の防災実務や災害対応とは切り離されている。

 

国が推進する社会還元加速プロジェクトは、その名の通り実用性が高いシステムを研究成果として要請しているにもかかわらず、長坂氏が、国難の事態にも杓子定規に「研究開発」の枠の中に留まっていたら、「東日本大震災協働情報プラットフォーム」も、続いてオープンした「311まるごとアーカイブス」も、実現することはなかったに違いない。

 

311まるごとアーカイブス(正式名称は東日本大震災・公民協働災害復興まるごとデジタルアーカイブス)については、こちら(http://311archives.jp/

 

(取材日:2011年12月26日 ネットアクション事務局 前田由美)

 

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