イザベラ・バードの「日本奥地紀行」(平凡社)の中で,彼女は苫小牧から湧別(苫小牧東〜厚真?)まで,草原を馬にゆられて進む.

364ページ

「私の眼前には,どこまで続くか分からないような,うねうねとした砂地の草原が続く.これはヘブリディーズ諸島(スコットランド西北の諸島で,千島列島に相当する)の砂地に似て,砂漠のようにもの淋しく,ほとんど一面に矮小な野ばらや釣鐘草におおわれている.」

「間もなく長い距離を早駆けで進んでみたが,柔軟な土の上を蹄鉄のない足がどさっどさっと音を立てるのは音楽的で面白かった.しかし私は北海道馬の特性をよく認識していなかったから,私の馬が「先頭馬」かどうか尋ねるのを忘れ,ちょうど全速力で進んで他の馬に追いつこうとしたとき,馬が急にぴたりととまってしまったので,私は馬の頭上から六フィート(約1.8メートル)も先の野ばらの茂みに投げ出された.伊藤がふり返って見たときには,私は馬の腹帯を締めていたので,この脱線行為は知られずにすんだ.」

 

平取でアイヌの取材をしてから,函館へ帰る途中,白老付近にて

459, 460ページ

「林間の草は固く強くて,八フィート(約2.4メートル)も高く生長していて,その柔らかに赤らんだ羽毛がそよ風に揺れていた.まずアイヌが,叢の中を無理に馬を通して道を作ってくれるが,もちろん道はまた塞がってしまう.」

「わたしたちはよく穴の中に転がり落ちたが,簡単に這い上がった.しかし一度は二人とも古い熊の落とし穴だったに違いないと思われる穴の中に,思いもよらぬ格好をして落ち込んだ.」

「私は案内人と話が通ぜず,このおかしな状況に置かれた二人のことを考えると,堪えきれなくなって,災難の最中にも拘らず,少なからず怪我はしていたが,へとへとになるほど笑いこけてしまった.」

 

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