外観

室蘭市緑町2番地にある、小さな木造洋館「旧三菱合資会社室蘭出張所」は、大正4年(1915年)に建てられた歴史的建造物です。付近はかつて札幌通と呼ばれ、札幌本道開削に伴って森町への定期航路のために明治5年に設置された「トキカラモイ桟橋」が存在し、室蘭港開港の地として知られています。当時は室蘭郡役所や病院、旅館などが立ち並び、室蘭地方の行政・文化・経済の中心地でした。

「旧三菱合資会社室蘭出張所」は、そのような近代室蘭発祥の地に、空知地方から積み出された石炭を船積みする拠点、旧三菱合資会社鉱山部の事務所として開設され、以降三菱鉱業、三菱マテリアルと一貫して三菱グループに引き継がれ、守られてきた建物です。

この建物は2014年に解体の危機に瀕しましたが、市民有志で発足させた「一般社団法人むろらん100年建造物保存活用会」が建物所有者に働きかけ、保存・活用を目指すこととなりました。
そして2015年6月、この建物は100歳を迎えます。

↓2014年11月に行われた99歳誕生祭の様子


旧三菱合資会社室蘭出張所 について知っていることをぜひ教えてください

[2015/01/10 山田 正樹]

 


100年の歴史から100年の未来へ

温かい日差しが外壁を照らして出すと、横ぶきとなった段々の明暗がくっきりとしてきて、建物の立体感を際立たせてくれました。
石造りや煉瓦の重厚さとは違う軽やかな印象は、港街の雰囲気を明るい景色に彩っています。

子供の頃は、その歴史の変遷など知る由もなく、ただ通り過ぎるだけで、見慣れた風景のひとつでした。
かつて、室蘭には、この建物のような、外壁が横ぶきの木造で白系の塗装がされた建物が点在していたと記憶しています。
今は失われてしまった、記憶の片隅にあるそれらの建物にも様々な歴史が刻まれていたに違いありません。

この辺りでは、港から吹いてきた風が潮の香りとともに、船の排煙や燃料のにおい等も運んできます。
100年の歴史から100年の未来へ。
風が運んでくる港の情報を感じながら、これからも、この地に在り続けてほしい建物です。

(2015.2.17 アマノヒロアキ

 

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