白鳥大橋と大型客船のちょっと困った関係 について知っていることをぜひ教えてください

近年、室蘭港には年間通じて多くの外航クルーズ船(豪華客船)が寄港しています。
室蘭市ではそうした客船をもてなすために、市街地に近い中央埠頭に旅客船専用バースを整備しています。

でも、最近はあまり利用されておらず、多くの客船が中央埠頭ではなく崎守埠頭に係留されています。
一見、市街地から遠く不便なのに、なぜなのでしょう?

これには、全国の多くの港で共通の、ある悩みが原因です。本項ではその悩みについて記述します。

中央埠頭旅客船バース
貨物船が係留されている。
崎守埠頭に接岸したボイジャー・オブ・ザ・シーズ


白鳥大橋と室蘭港

CC BY-SA OSM

室蘭港の入り口にある、室蘭のシンボル「白鳥大橋」。実はこの橋が大型客船の入港を妨げているのです。

白鳥大橋は設計当時、国内の他の港湾の入り口をまたぐ橋と同じく、世界的にも豪華客船の代名詞だった「クイーン・エリザベス2世号」がギリギリ通過できる高さで設計されています。
その高さは、TP(東京湾平均水面)+54.45m。

しかし、造船技術の発達により、21世紀に入ると外航クルーズ客船がどんどん大型化し、この高さではくぐれない船が多くなってきているのです。
この問題は、同じく港口に橋を持つ国内の他の港湾(レインボーブリッジと東京港、横浜ベイブリッジと横浜港など)でも、悩みの種になっているそうです。


白鳥大橋と大型客船の比較

 

2014年~2016年にかけて室蘭港に入港した客船の高さと喫水を以下の表にまとめます。
なお、船が港に入れるかという問題において、喫水という数字も重要な意味を持ちます。喫水以上の水深のある場所にしか船は入れません。
室蘭港では、中央埠頭が-9m、崎守埠頭が-14mです。

船名 総トン数(トン) 全長(m) 水面からの高さ(m) 喫水(m) 直近の寄港
コスタ・ヴィクトリア 75,166 253   8 中央埠頭(2016)
ル・ソレアル 10,700 142   4.7 中央埠頭(2016)
ダイヤモンド・プリンセス 115,875 290 54 8.5 崎守埠頭(2016)
クァンタム・オブ・ザ・シーズ 167,800

348

63 8.5 崎守埠頭(2016)
飛鳥II 50,142

241

45 7.8 中央埠頭(2016)
ぱしふぃっくびいなす 26,594 183 39 6.5 旧フェリー埠頭(2016)
ボイジャー・オブ・ザ・シーズ 138,194 311 63 8.8 崎守埠頭(2015)
マリナー・オブ・ザ・シーズ 138,279 311 63 8.8 崎守埠頭(2015)
セレブリティ・ミレニアム 90,228 294 57 7.9 崎守埠頭(2014)
サン・プリンセス* 77,000 261 49 8.1 中央埠頭(2014)
にっぽん丸 22,472 167   6.6 中央埠頭(2014)

(空欄は公開情報無し)
*サン・プリンセスは2014年12回寄港したうち、2回崎守埠頭に接岸している。

[2015/03/26 山田 正樹]