私自身について

筆者は労働者階級の家で育った。父は工場で働き、母は清掃員。両親は友人たちの親よりずいぶん年上だった。兄や姉は15歳で学校をやめたが、筆者は大学まで進学。長い年月が経ち、ニューヨークのロックフェラー大学の学長に就任するためにグリーンカードを申請したが、ずっと使ってきた出生証明書には両親の名前がないと言われ、却下。出生証明書の完全版を請求すると、筆者の両親は実の両親ではなく祖父母であり、実の父は不明、実の母は姉だった。彼女は17歳で身ごもったが、当時シングルマザーは恥すべきことと見なされていたため、ノリッジにある叔母の家に送られ、そこで筆者が生まれたが、二人がロンドンに戻ると、祖母は娘を守るために自分が母親のふりをして育てた。遺伝学者である筆者は、自分の遺伝について何も知らなかった。

自然淘汰による進化

全ての人は生物学上の親のどちらとも共有していない、新規の遺伝子変異比較的少ないが、持って生まれる。こうした遺伝的な差異が、個体を唯一無二のものにする。また、生物は常に実験を行い、革新し、世界を変化させ、変化する世界に合わせて適応し続けている。これを可能にするために、遺伝子は安定し続けることで情報を保存し、時には大幅に変化しないといけないため、バランスが大切だ。自然淘汰による進化とはこのようなことが、どのようにして起き、そしてその結果、生命が多様化した理由を明らかにしている。