チケウの海の親子星 について知っていることをぜひ教えてください

前田 享之(まえだ たかゆき)

昭和14年7月15日 室蘭市母恋南町に生まれる。昭和40年室蘭市役所に勤務し、市立図書館郷土資料室担当となる。昭和52年10月6日、自宅で急逝する。享年38歳。著書に、室蘭港湾資料第九集『室蘭屯田兵』がある。

「チケウの海の親子星」著者略歴参照

 

 

「本の生命は無限である」

この本の作者である前田享之は、昭和50年頃市立室蘭図書館に勤務していた時に室蘭のことを伝えたいと図書館の児童室でこどもに読んで聞かせるための「おはなし」を書きました。そして、この「おはなし」を集めた絵本を作りたいと本の製作に取りかかりはじめてまもなく、38歳という若さで急逝。

没後約10年の年月をかけ所縁ある人達の手によって『チケウの海の親子星』の絵本を出版、彼の願いを叶えました。

「本の生命は無限である」生前よく口にしていた言葉。この1冊にも無限の生命が吹き込まれたのでないでしょうか。

 

「おはなし」から伝わってくる昔の室蘭の姿

「そーれ!世界でたったひとつの金の屏風じゃー!!」神様はそう言うと両手をいっぱいにのばして、絶壁のふちの黒い壁をするすると巻き上げました。(チケウの海の親子星より)

「おお!!これはアフンルパロの洞窟ではないか。ここはあの世に通じているという入り口だと昔から言われているところだが...」(アフンルパロ物語より)

自然豊かな室蘭で暮らす動物たちやアイヌ民族のこと、初めて室蘭へ屯田兵が来た時のことなどの「おはなし」が全部で6話。

室蘭市HPの『おはなしむろらん』で2話を読むことができます。

 

「前田享之を引きつけて語ってみたい」

この本の改稿、書名決定、そして解説『前田享之さんの室蘭』を室蘭出身の児童文学作家富盛菊枝が手掛けました。

彼女と前田は歳が近く、学校こそは違うがお互いに室蘭で生まれ育ってきた、きっと同じような環境でその歩幅は同じだったのではないかと彼の子供時代を想像しながら綴った。

想像力の羽ばたきに乗って、前田さんの室蘭昔話が生れていった

前田さんは室蘭を主人公に書きたかったのだ

 

富盛菊枝の「故郷の川を遡る鮭の背に」の中にも『前田享之の室蘭』が掲載されています。

 

 

 

 

表紙を開くと・・・

「チケウの海の親子星」には生前親交の深かった方達からの想いが綴られた「前田さんを追悼して」と題したメッセージが貼られていました。

この本は市立室蘭図書館輪西分室から借りてきたのですが、図書館の方が貼られたものなのかと思います。

これを読んだことで前田の人物像をより深く知ることができました。母校である栄高校の60周年の記念誌の企画を進めていたこと、歴史研究家として研究論文や港湾資料の作成などにあたり中心的存在として活躍していたこと。また真面目でまっすぐな人柄であったことなども伝わってきました。

 

裏表紙には・・・

「故郷の川を遡る鮭の背に」の裏表紙には新聞の切り抜きがきれいに折りたたんで忍ばせてありました。開いて 見てみると、今年の3月(平成27年3月)に富盛菊枝が大沢小学校を訪れ「エッセー発表会」が開催された事の内容の記事でした。

この本も市立室蘭図書館輪西分室から借りてきました。前田が勤めていた市立室蘭図書館には、今も伝えたい想いを持った職員の方がたくさんいらっしゃるのだということも。