発酵の科学的研究は、現代科学の始祖の一人である、アントワーヌ・ラヴォアジエから始まった。彼は「発酵は初めのブドウジュースに含まれる糖が、出来上がったワインのエタノールに変換される化学反応である」と結論づけた。その後、発酵素と呼ばれるものがあり、それはブドウそのものに由来し、化学反応で中心的な役割を果たしているようだと提案した。しかし、彼は発酵素の正体をつかむことはできなかった。

半世紀後、工業用アルコールの製造者たちが製品を台無しにしてしまう現象の謎を解明してくれないかと、ルイ・パスツールに依頼し、すべてが明らかになった。首尾よくアルコールができた発酵用の大樽の沈殿物には、酵母細胞が含まれていた。そして、酵母は明らかに生きていた。一方、酸っぱくなった大樽を調べると、酵母細胞は一つも見当たらなかった。この観測結果から、微生物の酵母こそが得体の知れない発酵素、つまりエタノールを作り出す鍵となる物質に違いないとパスツールは提案した。

ここで重要なのは、生きている細胞の成長が、特定の化学反応の直接的な原因である点である。この例では、酵母細胞がブドウ糖をエタノールへ変えている。パスツールの偉大な貢献は、個別の事柄から、一般的な事柄へと歩みを進め、重大な新しい結論にたどり着いたことである。彼は、化学反応が単なる細胞レベルの興味深い特徴ではなく、生命の決定的な特徴だと見抜き、これを「化学反応は細胞の命のあらわれだ」とまとめた。

現在では、あらゆる生物の細胞内で、何百何千もの化学反応が同時進行していることが分かっている。化学反応は細胞成分をリサイクルしてエネルギーを得るために分子の分解も行う。生命体で発生する膨大な化学反応のことを代謝と呼ぶ。代謝は、維持、成長、組織化、生殖、そしてこうしたプロセスを促進させるのに必要なすべてのエネルギー源であり、生命の化学反応である。