細胞分裂はできないが成長することはできる分裂酵母の変異型を探すことから始め、四〇年以上をかけ、大型細胞の酵母菌株を五〇〇以上も特定した。

これは大きな一歩であったが、この遺伝子たちが必ずしも細胞周期を制御しているわけではなかった。

そして一九七四年のあの瞬間、偶然からお目当ての遺伝子と出くわす。あるとき、異常に小さな細胞を含んだコロニーに気づいた。ペトリ皿を汚染した細菌だろうと思ったが、注意して見てみると、成長する時間を経る前に、細胞周期が終えてしまい、小さなサイズのまま分裂した変異体ではないだろうかと考えた。

結果、この考えは正しく探し求めていた遺伝子であった。この小さな株をウィー(wee)変異体と名付け、ウィー変異体で変異していた遺伝子は、細胞周期の制御の中核をなす遺伝子とも連動しているらしいことがわかった。