・X線結晶構造解析低温電子顕微鏡法のような装置はわれわれの知覚をけた外れに拡張し、酵素タンパク質の分子を作る原子の位置と性質を測れるようにした。こうして酵素が反応する際に、酵素とその基質がどのように相互作用するか「見る」ことができるようになった。酵素と基質はパズルのピースのようにぴったりと収まり、基質の個々の原子を操作して特定の分子構造を作ったり壊したりする。これはまるで途方もなく正確な原子の外科手術のようである。

・酵素は協力して1つの化学反応の生成物が、次の反応の基質となるようにリレーのように伝えていく。そうすることで複雑なプロセスに必要とさ
れる一連の化学反応の連携が生まれる。これは「代謝回路」と呼ばれている。

・酵素は、「分子機械」のように並外れた正確さでDNAをコピーするなどいっそう複雑な合成活動にも協力する。

・このような酵素の中には化学エネルギーを利用して細胞内で物理的な仕事を行うものもある。その中には細胞や細胞内の様々な積み荷や構造物
に動力を供給する「分子モーター」の役目を果たすタンパク質もある。また、細胞の成分や化学物質を、それを必要とする細胞の箇所まで運んだ
りする。

染色体を分離し、分裂する細胞を2つに割るために必要な力を作り出す分子モーターもある。分子モーターの一つ一つは限りなく小さいが、筋細胞のいたる場所で一致団結して働くことで体の動きなど大きな動作につながる。

・タンパク質の集団は、酵素や分子機械よりもやや大きなスケールで、物理的に結合しあうこともある。特に重要なのがたんぱく質を作る場所であるリボソームである。リボソームはRNAの大きな分子と、数十個のたんぱく質からできている。リボソームは典型的な酵素よりは大きい。成長したり増殖したりする細胞には大量のタンパク質が必要なので、細胞は何百万ものリボソームを抱えこんでいる。