例えば葉山の「海に生くる人々」に描写される場所を歩くと、室蘭の入江、本町、常盤の風景を楽しむことができます。明治の頃、働く人の環境はかなり過酷なものでした。石炭、鉄で栄えた室蘭には独特の歴史、そして、働く者同士の友情と当時の風景が重なります。

幕西の遊郭を舞台にした曽根の「親なるもの 断崖」には、幕西、八幡様、トッカリショ、タイトルになっているチキウ岬輪西の街や丘の草原断崖の洞窟など、室蘭の風景がたくさん登場します。

三浦は自分になぞらえた主人公の目を通して「室蘭にもこんなところがあったんだ」と室蘭の美しさを語ります。

かつての室蘭が、山坂以外はほとんど湿地だったことを伝える富盛の感性などなど、本を一冊手にして歩きたい風景があります。