知利別の一本松の一生 について知っていることをぜひ教えてください

 知利別の知利別会館の通りの道路の真ん中にこのクロマツは生えている。このクロマツを初めて見たときの驚きを覚えている。「さすがだな室蘭市ではこのように木を道路の真ん中に残すくらいの気持ちの大きさがあるんだな」と。そしてこの木はランドマークであり、人々に安らぎや感動などを与えてくれる木であると感じた。この木から大きな気持ちをもらった人はたくさんいるはずだ。

 このクロマツが伐採されると言うことを昨日、新聞で知った。なんてセンスのないことをする開発者だと思う。この木を残しておくことはこの町に住む人や子供たちに驚くほどの潤い、やすらぎ、希望を与えることができるというのに。

 最近は道路沿いの樹木が簡単に庭の植木の様に枝を切り落とされて、みるも無残な風景になっているところが目立つ。無機質の道路の風景に色どりを加えているのが樹木だ。東京や札幌など大きな町に行くと街路樹の町並みがとても素敵に見えてうらやましく思う。歩道も木の存在を消さないようによけていたり木を大切にしているという工夫が見られる。しかし、行政で景観や町並みを美しくしようという計画が練られても、道路の管理優先でどんどん風景を壊してしまうのが昨今のまちづくりのように思えて仕方がない。

 北海道はその自然の豊かさや、その台地からの恵みの農産物などが道外や海外の観光客などに好評で今までは観光客が伸びてきたのだが、その資源である風景や自然をあまり大切にしていないのではないだろうか。どこにでも自然があふれていると錯覚しているのではないかと感じる。気付いたときにはもう、魅力的な自然や風景は色あせて、観光客なども足が遠のいてくだろう。大切な資源を身売りするまちに明日はない。


この木のことを知ったきっかけは、とあるブログの記事でした。
「あんぽんたんの木」。放送禁止用語ではないのか? なんて酷い名前なんだ! 木が可哀想じゃないか。って思った。
同時に、こんな酷い名前が付けられる木は、どんな木なんだろう? と興味を持った。

初めてこの木を写真に収めたのは、2015年のこと。
「なんじゃこりゃ?」って思った。
だって、道路のど真ん中にぶっとい木が一本生えてるのだから。
まさに「あんぽんたん」としか言いようがない光景。

でも、どこかほっとする光景でした。
普通に考えたら邪魔でしかないはずの一本の木を、邪険に扱うことなく、大切に守られている。
道路の方がむしろ避けている。それは、大げさかもしれないけど、自然と人間との調和を描いているように感じました。

そんな木が伐採されるというニュースを、通勤途中にFMで聞きました。
ああ、あの光景が無くなるんだな、と寂しく感じました。

多くの方たちが、この木にまつわる思い出をFBに投稿しました。
この木をゴールにマラソンを走った話。
この木を折り返し地点に走り、1往復を一本松、2往復を二本松と呼んでいた話。
そして、この木を切ろうとすると良くないことが起きる、祟りがあるという怖い話。

そんな話の一つ一つが、この室蘭を形作る「まちの記憶」です。
市史に乗るような大げさなことじゃなくても、この地域に生まれ、育ち、暮らしてきた人たちの生きた記憶です。

記憶は、語り継がれることで、その地域の共通財産になります。
語り継がれなければ、消えてしまいます。

木という「もの」が無くなっても、「記憶」という「こころ」は語り継ぐことができる。
そして「記憶」が消えてしまった時、この地域の「こころ」が失われるということだと思います。

僕はこの地域の生まれでも、この地域で育った訳でもないけれど。
そんな「まちの記憶」を書き留めることができたら、と思います。
もっともっと「まちの記憶」をたくさん聞きたい。
だから、この記事を見た皆さん、是非この木のことをもっと教えて下さい。

[2017/08/28 山田 正樹]