広浦に合流する直前の貞山堀
 太平洋を臨む海岸を持つ名取市。仙台空港のある下増田から閖上迄の5キロメートルほどを閖上浜に沿って貞山堀(貞山運河)が横たわっています。

 

貞山堀

 貞山堀は岩沼市の観光案内によると、伊達政宗が家臣川村孫兵衛に命じて、慶長2年(1597)より阿武隈川から名取川河口まで海岸線に沿って開削したもので、木洩堀とよばれていました。名取市役所の「貞山堀」(更新日:2010年2月19日、歴史資料)によると、木洩堀は阿武隈川河口の岩沼市納屋から名取川河口の閖上間にある南部水路15km区間で、仙台城下への建築資材の運搬等に利用したとしています。

 阿武隈川の下流域は亘理伊達氏などが統治する仙台藩の所領でした。木材を閖上まで運んだあと、閖上の広浦は貯木場となっていたのでしょうか。名取川、分岐して広瀬川を遡って仙台城下まで、実際にはどんな方法で木材を運んだのでしょう。川筋を仙台まで旅をしてみたくなりますね。
 仙台城の築城は1601年から。1600年、伊達政宗33歳のときに関ヶ原の戦があり、仙台藩第二代頭首となる正宗の嫡男、忠宗が誕生しています。時代が大きく動くときに貞山堀は誕生しました。

江戸時代の貞山堀と閖上

 江戸時代初期、閖上は仙台城下と太平洋結ぶ川港として、仙台平野の年貢米を江戸に運ぶために集積する役割を持もっていましたので、早くから都市形成したと考えられます。奥州街道の宿場町増田村(現在の名取駅付近)を流れる増田川広浦に注ぎ、貞山堀を通じて名取川に合流します。

 多賀城市の史都多賀城歴史の風には、「江戸時代の初め、仙台に城下町を建設するのに先立ち、阿武隈川と名取川の間に内川が開削されたことに始まります。木材などを筏(いかだ)で曳(ひ)いたことから、この運河は、後に「木曳堀(こびきぼり)」と呼ばれました。その後、仙台城下への物資輸送が盛んになると、万治年間(1658年~1661年)までに塩竈湾~大代間、次いで寛文10~13年(1670年~1673年)に大代~蒲生間と、多賀城市域を通る「御舟入堀(おふないりぼり)」が順を追って造られました。さらに、蒲生から仙台城下へ物資を輸送するため、七北田川沿いの福室から苦竹まで「御舟曳堀(おふなひきぼり)」が開削されました」と記述されています。

 政宗が命じて作らせた木曳堀は、関東平野や濃尾平野に比べると狭い仙台周辺の幾つかの平野の川を結ぶ道となり、あたかも広い一つの平野のような流域経済をつくりだしたといえます。

 阿武隈川の伊達氏の領地の上流は、幕府の天領となって絹の生産地として繁栄しました。現在の伊達市、福島市です。現在福島県庁となっている福島城趾は阿武隈川に隣接。そこには、かつて荷物を積み出した堤が残っています。阿武隈川流域の産品が閖上に集まった様子をご存知の方がありましたらお書き加えねがいます。

 

明治時代の利用

 幕末から明治にかけて、福島市は養蚕景気に沸きました。上述の名取市のサイトには明治16年(1883)から明治20年(1887)にかけて、野蒜築港(のびるちくこう)に伴い、大幅な改修が行われ、阿武隈川河口から北上川河口間の47kmが一つに結ばれ、蒸気船が運航していたと記述されています。1887年に日本鉄道の仙台駅、福島駅、翌88年に増田駅(現JR東日本東北本線名取駅)が相次いで開業して運輸の中心が鉄路に移る前夜、貞山堀と閖上の港は随分とにぎやかだったと想像出来ます。

 

貞山堀関連のページ

Add new "貞山堀"


参考サイトへのリンク

多賀城市のサイト。詳しく広い視点で素晴らしい。
http://www.city.tagajo.miyagi.jp/monosiri/sito/kaze/teizan.html#2504

海岸林再生プロジェクト
http://www.oisca.org/kaiganrin/project

とても詳しく貞山運河を解説しているサイト。高橋幸夫さんが運営されている。
http://www.teizanunga.com


北上川、阿武隈川、貞山堀の水運、生態系などについて調査提言されている

親水空間の有効活用に関する調査研究(仙台市)

 

かつての美しい風景がここに掲載されていた。

http://teizanunga.web.fc2.com/point/pt03.html


航空写真の9ページ目の辺りが名取市の下増田、閖上地区
http://www.thr.mlit.go.jp/Sendai/kasen_kaigan/fukkou/pdf/airphoto.pdf

 

名取市の市勢概要にも閖上と貞山堀の風景が記述されていた。
http://www.landscape.kais.kyoto-u.ac.jp/LRP/miyagi_natori.html

 

ここには古い写真などが掲載されている。
http://www.m-omoide.jp/photo/?a=natori2