知里家の庭で植物観察2 について知っていることをぜひ教えてください
2018年3月の観察会では主に積雪期でも観察しやすい樹木について学習した。
2018年5月20日(日)はsak(夏)の草(kina)の観察会として宗廣光明氏を講師に実施した。
まずは前回同様に知里家の庭は原生林に近い鬱蒼とした森であり、ポロト自然休養林のような気持ちよく歩ける森ではないが、かつての登別アイヌはこのような場所を生活圏にしていたであろうと説明された。
横山むつみ元館長は自宅前に花がきれいなものではなく食べられるものを中心に植えたこと、また、祝いなどで頂いた花束への興味が薄く、すぐに捨てていたという話も聞くことができた。植物は有用なものが興味の対象だったことがわかる。
それはむつみさんだけのことではなく、植物のアイヌ語名のつけられ方にも表れていている。主に利用する部位に名前があり、極端に言えば1つの種の植物全体を指す植物名はない。
記念館の周りに落ちていたハウチワカエデは花が咲き終わり、小さな果実がなり始めていた。ハウチワカエデの別名はメイゲツカエデ。
アイヌ語名ではiwa-topeni (山地の乳の木)または、retat-topeni(白い乳の木) という。いずれも樹液を利用したイタヤカエデのtopeni(乳の木)が名前に含まれていて、和名が植物の美しさの視点から見ているのに対して、アイヌ語名が実用的な視点で付けられていることがわかる。
室内での事前学習では他にどんなアイヌ語名の付けられ方があるのかトクサやハマナスなどを例に紹介した。
屋外では匂いを嗅いだり、ちょっとかじってみたり五感を使った観察会。ダニにとりつかれないようにと、宗廣氏は竹ぼうきを片手に10種以上の植物を紹介した。
最後にアイヌがメスと呼んだトゥレㇷ゚(オオウバユリ)を参加者の代表1名が掘り(抜き)、鱗茎部分をじっくり観察した。参加者は抜き取った鱗茎や1年目の披針形の1枚葉を出したばかりのオオウバユリ幼個体を持ち帰った。1株では少ないが澱粉つくりに挑戦したいと言っていた。
知里家の庭で植物観察
銀のしずく記念館での植物観察会はpaykar(春)、sak(夏)に続き10月ころcuk(秋)にも実施を予定している。
<リンク>銀のしずく記念館
※アイヌ名、用法には地域により差異があります。
<参考・引用>
アイヌ民族博物館『アイヌと自然デジタル図鑑』(http://www.ainu-museum.or.jp/siror/index.html)