カルルス上流には生物の居ない川がある

 登別川を遡り、カルルス温泉あたりから川底の色が茶褐色に変わる。これは鉄分が濃集しているもので、川底の岩石にもべったり鉄分が固着している。カルルス温泉付近からさらに上流へ遡ると茶褐色の川は分岐して左の川に続いている。右の川は綺麗で鉄分が見られない。更に上流へ遡ると、川底から大量に鉱泉が噴出しているところが見つかった。これは1分間に何トンもの湧出があると考えられる。PHを測定すると3前後でかなりの酸性だ。カルルス温泉の付近も同様で、下流の千歳浄水場あたりでPHが飲み水に適したぎりぎりの数字になる(*1*2*3)。

 2本の川の合流地点左が鉄分の流れる川(30年ほど前のプリント写真)


友人と大漏水と名づけた鉱泉の湧出場所(30年ほど前のプリント写真)

 このあたりは昔、カルルス鉱山という鉄の漂砂鉱床(*4)があったところで、川周辺の至るところが茶褐色の世界。冬期間のツアーで有名な氷洵の洞窟も鉄鉱床の採掘跡だと考えられる(荒川が判断)。奥は奈落の底のように真っ暗で見えない、ここに川が吸い寄せられるように落ちてゆく。冬は川底も凍っているのですべると奈落の底に吸い込まれる危険がある。非常に危険な場所である。

 30年ほど前に私と友人とで「登別探検隊」というチームを作り登別中の風景を見て回った。そのとき何度もここにいくことがあった。この大漏水は可能性として上流の氷洵の洞窟の下流にできた人工の湧出口ではないかと考えている(荒川判断)。この孔に長い木の枝を入れても届かないのでぞ~っとしたのを覚えている。洞窟に川の水がほとんど入り、洞窟の天井の一部が崩落し中の水が噴出しているのではと想像したのである(荒川)。PHは3前後で、この上流から次第にPH上がり、回復してゆく。

 郷土史研究科の宮武紳一先生の著した「郷土史探訪 郷土史点描」でこの川に魚がいないことが不思議であると書かれていた(*5)。この原因は登別探検隊の調査によると、カルルス鉱山の中の酸性の鉱泉の湧出により川に生物がすめない状態が起ったからだろうと推定している(荒川)。なにしろ川の水のPH3なのだから。

 

参考文献

*1:荒川昌伸ほか「北海道登別市における銅管の孔食と水質との関係について」:空気調和衛生工学会北海道支部講演会1995,PP129-130

*2:鈴木弘明、荒川昌伸ほか「銅管の孔食問題と水質」:北海道応用地学合同研究会論文集」№7、1996

*3:荒川昌伸ほか:「電気伝導度計による銅管孔食発生地区判定の一試案」:空調学会北海道支部講演会,2000

*4:太田良平:地質調査所:「5万分の一地質図副説明書「徳舜別」昭和29年

*5:宮武紳一:「郷土史探訪、郷土史点描」登別郷土文化研究会平成20年2月15日