新屋稲荷神社新屋稲荷神社(あらやいなりじんじゃ)は、新屋富士道沿いにある神社(1)。2021年1月1日現在、神社本庁傘下の被包括宗教法人(1)。文政6年(1823)に創建された新屋村の鎮守の稲荷社を前身とし、時期不定で、それ以前から同村の鎮守だった山王社を合祀。1914年(大正3)に飯田岡飯田神社に合祀されたが、1947年(昭和22)に旧社地に分祀された。1984年当時、山王社は境内社として祀られていた。

沿革

『風土記稿』のとき、新屋村の鎮守は、村持ちの山王社稲荷社だった(3)

現地案内板「神社の縁起」は、山王社は、天文12年(1543)頃、新屋村の開拓に従事した小林氏・鍵和田氏・加藤氏の3家族により祀られたもの、と推定している(5)

稲荷社は、小田原藩主大久保氏だったとき、新屋村に入植した山口氏・小林氏・村越氏らが、文政6年(1823)2月に大久保氏の菩提寺である小田原・茶畑町(本町)の正恩寺を通じて京都の伏見稲荷大社から勧請したもの(5)(8)その際の証文は(従四位上行伯耆守)荷田宿弥信資から別当正恩寺宛に授与されており、同寺に所蔵されていた(5)(8)。1984年(昭和59)3月に境内の古い小屋を取り壊した際に、中にあった杉箱から証文の写しが見つかった(8)

時期不定で、山王社と稲荷社は合祀された(5)(6)

  • 木村1985は、もともと新屋村では山王社を祀っていて、文政6年(1823)稲荷勧請の際に稲荷と山王を合祀したと推測しているが(8)、『風土記稿』は別地にあるかのように書いており(3)、合祀の経緯には、なお疑義が残る。

1914年(大正3)3月に、新屋の字川久保にあった稲荷神社は、柳新田の字屋敷添にあった稲荷神社小台の字荒井島(1984・昭和59年当時の、小台日枝神社の一の鳥居のあたり)にあった日枝神社、小台の字屋敷添にあった稲荷神社(4社はいずれも無格社と共に、飯田岡の字本村にあった村社飯田神社に合併された(7)(9)

  • 飯田神社の現地案内板には、1917年(大正6)に、柳新田稲荷神社と共に、飯田神社に合併されたとある(4)

1947年(昭和22)、飯田神社から旧社地に分祀(4)(7)

1953年(昭和28)4月に本殿が改築された(6)

1958年(昭和33)、神社庁から神社設立の承認を得て、宗教法人稲荷神社となった(7)

1976年(昭和51)の祭祀のとき、子供樽神輿2台が製作された(6)

什宝

扁額

稲荷社を勧請した際に、「正一位稲荷五社大明神」(5)の扁額を授与された(5)(6)(8)。この扁額は石の鳥居に掲げられていたが、1923年(大正12)の関東大震災のとき鳥居が倒壊したため、以後は奥の院の屋根の上に、桐箱に納めて祀られていた(6)

家族に狐憑きが出たときには、世話人の部落の副区長に話をして、「正一位稲荷五社大明神」の扁額を貸し出してもらって拝んでいた(10)。借りた扁額を質に入れた人がいたため、2日借りたら1度返すという決まりになっていた(10)

お白子様

1981年-1990年当時、社殿内には宝珠玉が安置されていた(5)(6)(7)(8)。この玉は、稲荷社の勧請のため京都へ使いに出た一行が持ち帰ったものといわれ、直径5cmほどの白く丸い球で、1984年・1990年当時、「お白子(白狐)様(おびゃっこさま)」と呼ばれていた(5)(6)

1985年・1990年当時、4年毎に開帳が行われており(5)(8)、玉を納めた桐の箱に白い毛が抜け落ちるといって、それが氏子に配布されていた(5)(6)

  • 村越1984に、3年毎に開帳されているとあるが(6)(7)、木村1985によると、4年目毎の開帳とのこと(8)。1990年当時も4年毎(5)

境内

新屋稲荷神社 入り口1981年当時の境内坪数は、94坪(約311m2(7)
 

什物

1984年当時の什物(6)

  • 社前の灯籠一対:1906年(明治39)山口浅五郎奉納
  • 鳥居傍の灯籠:1936年(昭和11)村越専吉奉納
  • 鳥居:1934年(昭和9)綾部粂次郎奉納

奉納俳句

1984年当時、拝殿の欄間に、1894年(明治27)と1900年(明治33)の初午の日に催された俳句大会の入選句が欅の大板に記されて奉納されてあった(12)

山王社

1984年当時、境内に山王社が祀られてあった(6)沿革については上記を参照。

樹木

1984年以前、境内にはの大木が2本、の大木が1本、銀杏の大木が1本あったが、欅は隣家の土台を上げる際に伐り倒されて5万円で売却され、銀杏も伐採された(11)。松の木は枯れて、1984年当時、鳥居の傍らに古根が残っていた(11)

年中行事

月日 祭礼名
1/1 歳旦祭
2月上午の日 初午祭
4/2近い日曜日 春季例大祭

資料:神奈川県神社庁(2)

参考資料

  1. 神奈川県ホーム > 教育・文化・スポーツ > 文化・芸術 > 宗教法人 > 宗教法人について > 神奈川県知事所轄の宗教法人 > 宗教法人名簿(令和3年1月1日現在) > その他1 宗教法人名簿(PDF:708KB)
  2. 神奈川県神社庁ウェブサイト>神社詳細>稲荷神社、更新時期不明、2023年2月10日閲覧
  3. 『風土記稿』成田庄 新屋村 山王社・稲荷社
  4. 著者不明「飯田神社 由来」現地案内板、設置時期不明、2022年閲覧
  5. 著者不明「(新屋稲荷)神社の縁起」現地案内板、1990・平成2、2022年閲覧
  6. 村越1984:村越栄子「新屋稲荷神社(沿革と縁起)」富水西北史談会 編『ききがたり 富水西北の歴史 第1巻』富水西北公民館、1984・昭和59、27-30頁
  7. 村越1984:27-28頁 - 『神奈川県神社誌』(1981・昭和56刊)からの引用
  8. 木村1985:木村吉治「新屋稲荷神社縁起について」富水西北史談会 編『富水西北の歴史 第2巻』富水西北公民館、1985・昭和60、161-163頁
  9. 綾部寿美子「小台日枝神社(沿革と縁起)」富水西北史談会 編『ききがたり 富水西北の歴史 第1巻』富水西北公民館、1984・昭和59、21-25頁
  10. 村越清(談)上村典子(記)「きつねとむじなの話」同書41-44頁
  11. 山口義雄(談)穂坂正夫(記)「若い日のこと」同書47-49頁
  12. 津田サキ子「富水西北公民館の移り変り」同書76-84頁