早川のビランジュ早川のビランジュ(はやかわのビランジュ)は、早川ターンパイク箱根の入り口から西へ約300mほど行った地点の、字飛乱地(石垣山の北側の斜面)に生えているビランジュ(美欄樹、バクチノキ)の巨木(1)(2)(5)。2020年当時、目通りの幹周り4.9m(1)

天然記念物指定

1885年(明治18)稿の神奈川県9等属・星野東作(編)『相模国足柄下郡、早川、石橋、米神、根府川、江ノ浦村誌』の早川村役場蔵の「勝地」の項に「美欄樹」の項目があって、旧時から野生の珍しい木として知られていた(5)

1924年(大正13)に、牧野富太郎からの連絡を受けて国の天然記念物に指定された(5)。暖かい地方の四国や九州には多く産するものの、東国では稀で、特に巨木は珍しい、と評されていた(5)

1984年(昭和59)に神奈川県によって「かながわ名木100選」に選定された(2)

飛乱地台

「飛乱地」への上り道所在地名「飛乱地」は美欄樹に因んで名付けられたもので、山上には「飛乱地台」と呼ばれる場所もあった(5)。徳川幕府の時代には大久保氏の所領だったが、明治維新後、払い下げられ、私有地となった(5)

小田原以北のビランジュ

なお、2011年以前に大井町が実施した「おおい自然園」の町内の樹木の調査のとき、同町金子の最明寺の境内の巨木がビランジュであり、また南足柄市の寺社にも4本のビランジュが生えてることが確認された。自生したものか植栽によるものか不明だが、小田原より北の地域でも生育していることがわかっている。(3)

診断調査

2007年(平成19)7月に日本樹医会神奈川県支部による「かながわ名木100選」選定樹木の診断調査が行われており、そのときの調査票によると、東側の大枝に欠損があり、南側の根元にベッコウタケが生えているなど、樹勢は幾分影響を受けているが、目立たない程度であり、樹形も自然樹形に近く、処置の必要性はなし、と評価されている。緑陰による気温調節効果、防風・遮音効果があると評価されている。(2)

主な計測値

調査

樹齢

(年)

樹高

(m)

幹周

(m)

枝張

(m)

資料
2007 320 25.0

胸高4.93

根元5.59

東西21.9
南北11.8
(2)
2020 NA 約20.0

目通り4.9

株元約6.0

東西17
南北14
(1)

リンク

上り道の途中にある案内板

参考資料

  1. 小田原市文化部文化財課「天然記念物 ・早川のビランジュ」小田原市公式サイト、2020年10月19日
  2. 日本樹医会神奈川県支部 かながわ名木100選(2007・平成19年12月の報告書)
  3. カナロコ分布の北限覆る…?天然記念物「早川のビランジュ」/神奈川」神奈川新聞、2011年8月29日
  4. 文化遺産オンライン「早川のビランジュ」更新時期不明
  5. 内務省「八 早川村の美欄樹」『天然紀念物調査報告 植物之部 第6輯』内務省、1926年(大正15)、p.17