風土記稿』(ふどきこう)、『新編相模国風土記稿』(しんぺんさがみのくにふどきこう)は、江戸後期に江戸幕府が編纂した相模国の地誌(1:6)

編纂の経緯

江戸幕府は、文化7年(1810)に諸国に地誌編集を命じ、天保7年(1836)に『新編武蔵風土記稿』を完成させた後、相模国の地誌編集にかかり、天保12年(1841)に『新編相模国風土記稿』の稿本全126巻が完成した(1:6)

内容

「詳説」では、各郡ごとに、村々の土地の沿革、検地の年代、領主の遷替を記し、山川・式社・寺院・旧蹟などにも記載が及ぶ(1:6)旧家の名を挙げている点も特長と思われる。

文献上の裏付けの無い伝説は採用しない、「縁起」と称する僧侶の作り話は採用しない、といった厳正な記述態度で編纂されている(1:6)情報を集約せず、引用文とその典拠をいちいち明記している点も特長と思われる。

古風土記と逸文

「新編」と称するのは、和銅6年(713)に元明天皇の詔によって撰述された旧編の『風土記』(古風土記)が存在するためだが、完本で残されているのは『出雲風土記』くらいのため(1:6)、『風土記稿』と略しても古風土記のことだと思う人は少ないと思われる。たまに断片的に古風土記の本文が引用されて伝来している場合があり、その場合は「逸文(いつぶん)」とか「風土記逸文(ふどきいつぶん)」と呼ばれている(『風土記稿』本文中でも言及がある)

刊行物

1884年(明治17)から1888年(明治21)にかけて、林述斎の編で刊行され、1984年(昭和59)当時はその復刻版が流布していた(1:6)

2023年現在は、国立国会図書館デジタルコレクションの『大日本地誌大系』(雄山閣、1932・昭和7 - 1933・昭和8)の電子化資料がインターネットで閲覧可能。

『大日本地誌大系』の翻刻には、しばしば翻刻の誤りがあるので、怪しいときは国立公文書館の電子影印(内閣文庫本『新編相模国風土記稿』請求番号173-0190)をチェックするのがお勧め。

参考資料

  1. 穂坂正夫「村の昔 「新編相模国風土記稿」について」富水西北史談会 編『ききがたり 富水西北の歴史 第1巻』富水西北公民館、1984・昭和59、6-10頁

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