焼くさや

島の高校生たちに「くさやは旨い。くさやの味を知って欲しい。食べないで、食べられないというのはもったいない」と言われた。彼女達は、小中学校の給食でもくさやが出るというう。それが「ぱねえ旨さ」なのだそうだ。ぱねえとは半端ねえの短縮系で、「中途半端ではない旨まさ」なのだそうである。波浮こうに出かけると、港の入り口、車でおりてゆく途中に藤文(ふじぶん)がある。父さん、奥で昼寝していることがおおいので、大声で呼ばないとらしい。大島にこんな人おおいけど、とびきり愛想がいいと言う訳じゃないけい。だけど、訊くと何でもおしえてくれて、大事な漬液もみせてくれた。挙げ句、どんどんサービスしてくれる。

連れは強烈だと言うが、僕は香ばしいというと「乳酸菌の匂いだよ。上に上げると大変なにおいだけど、下でタンクのなかで寝てる時は、あんたの言う通りこんな匂いさ。二つあってね、毎日使うと死んじゃうし、ずっと寝かすと餓死しちゃうから一日交互につかうんだ。魚をつけることで栄養が入って、それを30時間かけて醗酵する。それで旨味がつよくなったとき、魚をつけるんだ」なんか父さん、カッコいい。


近くの水産高校の生徒がかいた模造紙の資料が日に焼けてもまだ大事そうに壁に貼ってある。
そこには、最初は塩をせつやくするためにつけ汁を使い回していたら、こんな匂いの、保存もよく味もいいものに発達した歴史が書かれていた。

波浮で藤文いいかも。
アオムロもトビウオも250円から270円。
匂いが出ないようにすごく丁寧に包んでくれる。
さらに、あった、あった。真空パックやら、瓶詰めやら。
家に持ち帰っても焼くと大変な匂い。外で焼いたら近所迷惑な人には、焼いてしまったものが用意されていた。
これはいい。

「ぱねえ旨さ」を持ち帰るのに成功。