大島に行こうと思って、宿を検索していたら、朝海館のホームページに行き当たった。何とも朴訥とした文書と、奇麗すぎない写真。
岡田港の近く。早朝5時に客船でついても、荷物を置いたり、広間で休んだり、朝ご飯も食べられる。風呂に入られる。
漁船に乗る、山を歩く、レンタカー、レンタサイクル、スクーター、旅人への配慮に溢れた案内が、短い文書で淡々と書き込まれている。決して良さげには見せない。実力以上の案内はしないという決意が分かる。でも、もてなしをする気概が強く伝わってくる。「このホームページいい」と友人に紹介してしまった。「おれも行きてー」と返事が返ってくる。友人たちにもこのサイトの良さは分かるようだ。
思わず「大島の一番いい季節はいつですか」とメールを送った。
短い返事が返ってきた。
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ご連絡ありがとうございます。
やはり一番お客さんが多いのは夏です。
でも私的には梅雨時前の4月、5月の若葉時期かと思います。(目的にもよりますが)
よろしくお願いします。
朝海館
100-0102
東京都大島町岡田字助田58-1
TEL 04992-2-8407 FAX 04992-2-8807
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その、4月、5月に本当に行ってみたいと思った。
実際に島に行くと、港まで旗をもって迎えに来たのは、細身で男前のご主人。メールと同じで口数は多くないが、配慮に溢れている。
宿に着くと、ホームページはかなりひかえめだと分かる。古い建物。何十年か経った民家だ。斜面に建て増していった構造がよくわかる。探検心をそそる作り。小さく始めて、努力を重ねて、付け足していった経営の歴史も分かる。砂刷りの壁。やたら新しく、広く奇麗なトイレ。いつでも入れる浴場。田舎のばあちゃんの家を尋ねたような懐かしさ。掃除の行き届いた床。ご亭主は先代から引き継ぐにあたって、近所の大工に弟子入りしたという。その思いの通り、絶えずこつこつと自分で出来る修繕をしている。玄関を入るとすぐ横の広い厨房でご亭主の兄弟二家族総出で料理をしている。ピーク時は高校生のバイトも頑張っている。
「山に行きたいんだけど」
「今日は山はダメ」
ばっさりと客に言う姿がまた笑えるほどいい。霧が出て、登っても危険だし、寒いし何も見えないのだという。客はあっさり諦めて別の楽しみを探せるのだ。みていると、温泉や動物園など他の行動をちゃんと提案している。
ロビーのいたるところに、近くの絶景ポイントや歩いて楽しめる「道」の提案をした手書きの案内が貼ってある。
バイクを預けている釣り人、仕事でくる常連さん、ダイビングにくる家族連れ、赤ちゃんと一緒の若夫婦、自転車を借りて走る若者、車を借りてドライブする恋人、学生さんのゼミ合宿、いろんなお客さんと広間で会う。みんな口をそろえて居心地がいいという。僕も随分いろんなことを訊かれた。客どうしでも、店や、ガイド、温泉、島人との交流などの情報交換をしている。広間で出される食事は、これでもかという量と種類。おかずが4種類以上は当たり前。天ぷら、焼き魚、刺身、鼈甲、煮物、おひたし、酢の物、お新香、どれが主菜でどれが副菜なんだか。お父さんが畑でつくったハヤトウリや明日葉も沢山出てお腹にいい。朝飯もたっぷりだ。どんだけ飯を盛ってもいい。
朝海館には別館がある。行って見ると別館と表記されたページを見たよりはずっと洒落れて見えるコテージ群だ。これは、若旦那(今のご亭主)が自分で企画して、安く若い人たちのグループを泊めるためにつくったもののようだ。奇麗に手入れされたログハウスが椿の森の中にしゅっと顕われる。貸し切れば、バーベーキューをして遅くまで騒いでもだれにも迷惑がかからない。
ただし、周りにはたぬきが生息しているらしく、きちんと後片付けをしないと食べ散らかされるので注意が必要なのだという。まるでキャンプをしている気分だ。
朝海館では原付も借りることができる。朝海館のスクーター。年季が入っているが、まだまだ元気に走る。
大島は原付でのツーリングがとても気持ちいい。小回りもきくから一人旅でよく晴れた日は最高だ。早朝に宿の近くを一走りする時にも使える。
あのホームページの短い文書は、一本指打法。キーボードが苦手だと言いながら、丁寧に一つ一つ文字を打ち込んだ結果が、心がしっかり伝わる情報発信になっていた。
ここ泊まるといいんだけど、ついつい朝晩食べ過ぎて、肥るんだよなあ。と朝の散歩に出かけて運動してみたり。
バイトのお姉さんも「私、ここで働くと肥るのよね。ご飯美味しくて」と笑う。
サーファーのご亭主。暇を見つけては海に浸かっている。天候により、大島のどの海岸でどんな波か全部わかるようだ。無口だけどたまに酒につきあってくれる。
伊豆大島ナビにすげーカッコいい写真も見つけた。
ご亭主の弟さんは町会議員。彼も笑顔でよく働く。
TEL:04992-2-8344
http://www.asamikan.com/(外部サイト)
交通
大島バス
元町港より大島公園ライン大島公園行きで「岡田郵便局前」停下車、徒歩5分(バスの所要時間は概ね13分)
岡田港からは徒歩15分、バスを利用の場合は大島公園ライン元町港行きで「岡田郵便局前」停下車、徒歩5分(バスの所要時間は概ね5分)
問い合わせ
04992-2-5522
朝海館は岡田港近くにあります
岡田港は風に強く、元町港に船が入られない時に使われています。津波対策もできていて、古い大島の火山が侵食した地形や、林芙美子がナポリに例えた断崖の風景を楽しむことのできる港の集落があります。
岡田の集落の情報を集めてください
歴史ある岡田には独特のお祭りと踊りがあります。