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 子どもと馬に乗る



 小学校3年生までは滝野のすずらん公園で満足していた息子たちも、4年生ともなると野外騎乗(ホーストレッキング)じゃないともうだめみだいだった。じゃ、たっぷり馬に乗るかとなった。
 

  札幌の中央区から車で20~30分。南区の観音岩山(八剣山:はっけんざん)の麓に未経験者でも馬と一緒に山に連れて行ってくれるところを見つけた。そりゃ、もちろん落馬の危険はある。厩舎に入ると臭い。でもそんなことはすぐに気にならなくなる。森の中を馬で進む と、自分がどこの国のどの時代の者かわからなくなる。馬に任せておけば、岩や倒木などの障害物を自然に跨ぎ、道なりにどんどん深山へ踏み分けていってくれ る。馬の背で揺られるだけで身体が自然にバランスを取ろうとする。2時間も乗っていれば腹や背中、そして脚に筋肉痛さえ覚える。心地よい汗をかく。心の安らぎを得るだけでなく、肩の凝りさえほぐれてゆく。

 

 札幌の市街を囲む山々の針葉樹と広葉樹の混合林は美しい。
馬上からヒグマの糞を見つけ、熊の棲む森を市域に持つことを誇らしく思う。大食漢のヒグマを養う深い森。もし、近くに熊がいれば馬たちが真っ先に気づくので身の危険は感じないが、熊よけにと、わざと大声で話すのも、鈴を鳴らすのも一興だ。古い林道を馬で行く。人も車もめったに入らない絶好の馬道だ。

 

 私の子供時代でも、札幌オリンピックの前ぐらいまでは、馬橇(そり)や荷車を引く馬を見た覚えがある。1960年代の最後だ。父や母の時代なら、札幌市内も、農耕や荷車引きの馬が沢山いたということだ。役畜の姿が完全に消えて30年以上、私達の世代は畑や山で動物の力を借りることと遠ざけられていた。息子たちには街で暮らしていたとしても、馬や森の近くで育ってほしいと思う。といいながら、本当は自分が一番はしゃいでいるわけだ。

(2003年6月1日・杉山幹夫)


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