♪知床の岬に~ はまなすの咲くころ~♪

 

きっと誰もが一度は耳にしたことのあるこのフレーズ。「知床旅情」である。

作詞作曲は森繁久弥氏が手がけ、また加藤登喜子氏や石原裕次郎氏など、多くの著名人がカバーしている有名な曲である。

映画「地の涯てに生きるもの」(1960年公開)の撮影終了の際、森繁氏が羅臼町民(当時は羅臼村)のために即興で作曲した「サラバ羅臼」が歌われ、それが後の知床旅情となる。

歌詞に時折、知床の名所および名物が多く登場する。例えば「はまなす」は斜里町の町花、「峠」や「国後」など、「これぞ羅臼」というワードが多く出てくる。

森繁氏は映画収録の際、有志によるエキストラ出演に感銘を受け、旅館で村民との深い交流もあった。三番の歌い出し「別れの日は来た ラウスの村にも」は、それが顕著に表れている歌詞と思う。交流が深い町民、また羅臼にも感慨深いものがあり、いつまでも忘れてほしくない思いから「忘れちゃいやだよ 気まぐれカラスさん」(羅臼は日常的にカラスが多く見られることからと解釈)と作詞したのだろう。

また二番の「岩かげに寄れば ピリカが笑う」の「ピリカ」。「エトピリカ」のことかと思われがちだが、ピリカはアイヌ語で「美しい」や「綺麗」という意味で、「美しい娘」を中心として二番は作詞されたと思う(実際に、二番の歌詞は自然の情景を描いている部分がある)。

 

森繁氏が羅臼に寄せる思いをストレートに綴った歌詞を切なげに歌われるこの歌を、知床を観光しながら聴くのはいかがだろうか。

 

羅臼の冬景色。さぞ森繁氏も感慨に浸ったことだろう。