「最初っから焼いてるってんだ!」
大将は母親が、僕のうな重のオーダーを告げた時になんともきつく言う。大女将は「あらすいませんね」と明るく僕に向かっててへぺろ顔をする。創業者の大旦那が苦笑いしながら「せがれなんだよ。気むずかしくて困るんだけどさ、老いては子に従えさ」と。28歳でお店を構えて、今は73歳白髪、色白の働き者だ。こっちも初対面だから遠慮していたが、大女将と大将のやりとりで、ちょっと吹いたら、大旦那と話すきっかけになった。

うなぎは、今まで食べた中でももっとも好きな味だった。
札幌で、街の区画に合わせて北向きから直角に東向きに流れを変える鴨々川のほとりに時代の風情。

僕の後の客は「うなぎ切れました」と言われていた。

 

 

「う、うまい!」

「米は何?ササニシキ?やっべ」

「うちね、米もね評判いいよ」

 


大将は僕が座ると同時に、黙ってうなぎを焼いていたそうで「前のお客の分があったから、三人も四人もついでだべや」言う。
大旦那は「お客さんが、律儀にちゃんと飲んで待つ人だと思ったからですよ。炭でゆっくり焼くから、結構待たせて、食事だけの人って、お腹空きすぎて、トラブルになることがあるんですよ。」と。

匂いいいしなあ。

「あれ、僕は、大将に客として認められたのか」と嬉しくなって、彼にビールをおごると、子供みたいに喜ぶ男。
職人って本当に気分がいい。

前から、ここにうなぎ屋があるのは知っていたが、営業している時に通ったことがなかった。
風下を歩いていると、100メートルは離れているのに、第一ホテルのあたりから、うなぎの焼ける匂いで驚くほどそそられる。大旦那が、カウンターを手で指して僕を誘う。大女将がお酒は何がいいです?おつまみは?

冷酒とタコを頼み、少し話す。札幌なら、誰でも知っているスキーの有名人がお嬢様といらしていた。高齢でも姿勢が良くてすごくかっこいい。爽やかに会釈して出て行かれた。

 


 

札幌市中央区南7条西2丁目
電話011-512-8272

最寄りは市営地下鉄東豊線 豊水すすきの駅 出口6番
次に、市営地下鉄南北線 中島公園駅 出口2番
 

営業時間 11:30~13:00 17:30~21:00だが、一本単位で仕入れしているので、開店と同時に行くか、予約を入れるのがいいかも。また夜は、お酒を飲みながらうなぎを待つのがいいかも。定休は月曜だが、不定休あり。

 



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