なぜ私たちが準大賞をとれたのか

4年次 午後部 長谷川 千夏

 

高校生チャレンジグルメコンテスト

皆さんは高校生チャレンジグルメコンテストをご存じだろうか。

今年で三回目を迎えたこのコンテストは高校生が地元で手に入る食材を使用してオリジナルレシピを考案・販売し、レシピのオリジナリティだけではなく原価率の考察、地元との連携やストアオペレーションなどを総合的に競うコンテストである。

 

 

 

 

私たちは今年、この高校生チャレンジグルメコンテストに「大通び~はいぶ」という六人チームで参加し、「見た目もおいしい!DORIグラタンパフェ」という料理を考案した。そして私たちは準大賞を勝ち取った。

しかし、普通に考えると賞を取れる状況ではなかった。

 

 

一人で抱え込まないと決めていた

私は料理を作ることも食べることも大好きで、そのうえ畑作業や作物を育てるのも大好き、家庭菜園では20種類以上の野菜やハーブを育てている。

しかし、いつも仕事を一人で抱え込んでしまう癖がある。そして無理をしすぎて体調を崩してしまうことが多々あった。そのため私はこのコンテストに参加するにあたって、「仕事を一人で抱え込まない」と心に決めていた。

 

チームの環境は決して良いものではなかった

しかし、ふたを開けてみると私たちのチームの環境は決して良いものではなかった

メンバー内の調理未経験者が六人中四人。グルメコンテストなのに包丁もまともに持てないメンバーが半数以上だった。私は絶句した。ある程度できない人はいるだろうと思ってはいたが、まさかここまで料理ができないメンバーが集まるとは思ってもいなかった。

そして、本校の過去二回の成績は一昨年三位、去年は準大賞。様々な先生方からのプレッシャーが襲ってくるのにもかかわらず、引き継ぎはほぼゼロ、担当の先生も今年から変わり、自分たちで試行錯誤していくしかなかった。

元々、私たちの通う市立札幌大通高校のある「札幌」という地域は、他校の「羅臼」や「三笠」「函館」などの地域と違い、道外から見た地名のブランド力は強いが、札幌で行われるこのコンテストでみると地名のブランド力はとても薄い。その上、強く印象に残る特産品があるわけでもないので食材のセレクトも難しい。

 

そんな中でのレシピ考案

今年は授業の関係で動き出したのが一次審査のたった三週間前だった。

私はレシピ案を出すがほかのメンバーはほとんどだせない。そんな中でも一次審査の締切日は刻々と迫っていた。

市立札幌大通高校は定時制・単位制・三部制のため放課後がなく、各メンバーの時間割もばらばらのため全員が集まることはほぼ不可能といえる。

そのため、もう時間がないと先生と相談し、半ば強引に「見た目もおいしい!DORIグラタンパフェ」というおかずパフェに決定し、ぎりぎりで一次審査のエントリーシートを送った。

見た目もおいしい!DORIグラタンパフェ



結果は…合格

私はとてもほっとしたと同時にこのままの状態で進めると自分が壊れると確信していた。

 

食事制限

ここでまさかの事態が発生した。私自身に新しい病が見つかり治療のため、糖質や炭水化物を抜く食事制限をしなくてはならなくなった。つまり、自分で考え、作っているレシピも食べることができない。そして、試作品の味見や試食が全くできなくなってしまったのである。料理を見ているのでさえつらい状況だった。私はこのコンテストのメンバーから身を引こうと思い、先生に連絡すると速攻で先生から電話が来た。

「今までのようにひとりでは進めなくていい。せっかくここまでやってきたのだから、レシピ開発から手を引いてもいいから残ってほしい。」

私はこの言葉をきいてはっとした。私はまた一人で抱え込んでいた、また同じ過ちを繰り返すところだったと今までのことを思い出し反省した。そして、このつらい状況でもここまでやってきたものを形にしたい今までの自分を変えたいと思い、迷いもあったが残ることを決心した。

 

 

なぜ私たちが準大賞をとれたのか。

このような決して良いとは言えない状況からなぜ、私たちは準大賞まで上りつめることができたのか。

 

最初は全員で取り組むこととして各方面からの協力をお願いした。レシピの考案や試作品作りでは札幌パークホテル総料理長である江本様からレシピのアドバイスをいただき料理のブラッシュアップに努め、また、ヴェール農園ではジャガイモ「北あかり」幻の玉ねぎ「札幌黄」を収穫し、当日に使う食材を吟味するなどの活動も行った。

 

札幌パークホテル総料理長様からのアドバイス

ヴェール農園での食材収穫

 

そして、接客力やレイアウトにも磨きをかけた。オータムフェスト開催中に行われていたチャレンジオータムにて実際にお客様を相手にしてどうやったらお客様を気持ちよくおもてなしできるかをなどの接客力やどの位置にPOPや商品を置くと見てもらえるかなどのレイアウト力を試すことができ、当日に活かすことができた。

 

そして当日が近づいてきた追い込みの時期に行ったのが「部門別リーダー制」の導入である。

今までほとんど私一人で行っていた仕事を、レシピ・PR・レイアウトの三つに分け、各部門にリーダーを配置した。それにより、各部門でのやらなければいけないことや、優先順位が明確になり、ほかのメンバーにも責任感を持って行動してもらえるようになった。

 

レシピ部門では食材の調達方法や原価率の計算、前日の仕込みや当日のお店運営のシフトの組み込みなどを細かく行った。

 

PR部門では試作品作りの工程などの写真撮影や記録や当日配布するチラシ作り、また、FMアップルの生放送に出演し、大会自体のPRや自分たちのレシピのPRを行った。

 

レイアウト部門では、雑誌やインターネットで研究したのち、チーム名である「大通び~はいぶ」にちなみ、ミツバチの巣をイメージしてテーブルクロスや本校の美術の先生に手伝っていただき木製の受付台まで手作りでこだわり、世界観を大切に考えた。

当日の店頭レイアウト

 

 

雨の中迎えた当日

当日は、ミーティングや前日の仕込みに参加できず全く自分のすべきことがわかっていないメンバーもいる中での参加となった。その上、周りの学校を見渡すと調理系や農業系の高校や部活動ばかり。正直、私は不安になった。毎年コンテストのレベルが上がっているのを肌で感じた。しかし、各部門からの指示によりメンバーの配置や仕事を明確にでき、一人ひとりの力を発揮できる環境は作られた。不運なことに天気は大荒れ、雨が降り注ぎ、時には突風も巻き起こり、お店に立つとピリッとした緊張が走る会場は戦場のようだったが、常に笑顔で今までにやってきたことを出し切る気持ちでお店に立った。

 

この日の私の仕事は店頭での受付呼び込みはもちろん、審査員の方々へのプレゼンステージ上でのPRトークであった。

 

店頭での仕事ではチャレンジオータムでの経験を活かし、おもてなしを行い、時には外国の方に英語で対応する事もあり、寒い中でも充実したひと時だった。

店頭での呼び込み

 

又、審査員の方々へのプレゼンではメンバーの後押しを受けながらも一人で審査員の方々の前に立ち、レシピのこだわりや、食材へのこだわり、そして様々な方々からご指導やご協力をいただいたことを中心にプレゼンをし、ステージ上でのPRでも一人で壇上に立ち、お笑い芸人の方々とお話ししながら今までの活動なども含めて私たちのできる限りが詰まったレシピになっているとアピールした。緊張して手が震えていたが、私のできる限りの力を出し切った。

 

ステージ上でのPR

 

あきらめかけていた閉会式

日が暮れて閉会式が始まった。今回は10個の賞が用意されていた。次々に賞が発表される中、私たちのチームは呼ばれず、残りは準大賞と大賞のみ。周りを見渡すと農業高校や調理系高校が目に入る。私は正直、賞は取れないかなとあきらめかけていた。

ドラムロールの後、

「準大賞は…市立札幌大通高校!!」

驚きで身体が硬直し、目が潤んだ。それと同時に今までの活動で楽しかったことや辛かったことや苦しかったことが脳内を駆け巡った。ステージ上に上がり、盾と賞状を受け取った。

身を引こうと思っていた時には考えられなかった賞をなんと準大賞という形でいただき、私はほっとした気持ちがとうれしい気持ちが入りまじっていた。そして一番強く思ったのはこのコンテストをやりきってよかったという気持ちだった。

 

閉会式

準大賞!
 

 

 

余裕を持つこと

私は当初、一人で仕事を抱え込んでいた。そして忙しすぎて目の前の仕事をこなすことで精一杯で余裕などなかった。そして体調も崩し、また仕事が遅くなった。悪循環だった。

しかし、状況を見直し、計画性を持ち、仕事を割り振けることにより、先が見え、余裕が生まれた。

私はこの余裕を持つことはとても重要だと感じた。

余裕が生む「大きな心」「視野の広がり」は新たなアイディアや解決方法を生み出すことができ、プレッシャーやストレスも緩和される。

体調を崩すことも減った。好循環になった。

 

過去の自分から踏み出した大きな一歩

私は高校生チャレンジグルメコンテストを通して初めて自分の状態を客観的に見直し、悪循環から好循環へと自力で切り替えることができた。そして食事制限というデメリットがある中でも余裕を持ち楽しむことができた。

明らかに今までとは違う自分だった。

これからの人生に活かすことのできる行動力や計画性や客観的に自分の状況を見る力が身についたと思う。

高校生チャレンジグルメコンテストを通して私は過去の自分から大きな一歩を踏み出すことができた。