札幌の街中、大通講演とすすきのの間に狸小路がある。6丁目の映画館の建物を利用して、近隣の野菜を集めた八百屋と、道産の素材などをつかって食べ物を提供するHUGがある。一番奥のワインを飲ませる店でちょっと驚いた。
この店は、2013年夏に突然閉店した。

その晩、道北の士別からいらした女性に何故かこの店の初夏の名物、椎茸のアヒージョをごちそうになる。

じゃ、お礼にと岩見沢の宝水雪の系譜シャルドネ2012をさし上げて、自分も飲むことになった。
http://housui-winery.co.jp

 

 ふじききょう園の椎茸、ニンニクをオリーブオイルで煮るようにゆっくりと調理。噛むと口の中で水がほとばしる小ぶりの椎茸が手に入ったときだけに供される

 

このお店、残念ながら閉店になったが、現在はオステリア大和亭で宝水ワインとふじききょう園を合わせて楽しむことができる。
オステリア大和亭
札幌市中央区南4条西5丁目 第4藤井ビル3階 Tel&Fax 011-211-6682
OPEN 18:00〜25:00(24:30 L.O.) http://www.yamatotei.com
 

 2011年秋。収穫を迎えた宝水ワイナリーのシャルドネ。この区画のこの葡萄は「2011RIKKA雪の系譜シャルドネ」となったもの

 

二日前に、春の楽しみの一つ、ワイナリーで水の上がったシャルドネの枝の先端から滴り落ちるしずくを舐めたばかりだ。舌が宝水の土の味を鮮明に記憶している。甘くて塩っぱくて苦い独特の味と香りが、シャルドネからするのは普通のことだった。それだけでなんとも贅沢な気分だった。

ところが、椎茸を噛むと思い切り同じ味の水が出てきた。あとからオリーブオイル、香ばしいニンニクの香り、椎茸の香りがついてくる。

一緒に飲んでいた女性と店主と私は目を見張った。
鳥肌がしばらく治まらない。

http://www.yukko-siitake.com
 

岩見沢の椎茸だというので、同じ岩見沢だからだねといいながら、それにしても合いすぎる。

何処の椎茸か店主にパックの裏のシールを見せてもらうと「ふじききょう園」とある。
ネットで検索するとワイナリーの澤を挟んで南隣ではないか。
標高が同じなので地質が一緒じゃないか。
 

 

 

思い出した。女性に声をかけてもらった理由は、コロンのバケットを旨いと大騒ぎして食べていたからだった。
北海道の小麦だけで焼いたパンがこんなにも旨いとは。このパンにワインと椎茸を結びつけられた。
http://www.coron-pan.com

 


店長の薬袋さんは、「ここのこの小さな椎茸じゃないとアヒージョとして美味しくないの」といい、このサイズの椎茸が入らないと、アヒージョが作られることはない。彼女の素材選びと調理でないと、椎茸からほとばしる水とシャルドネが吸い上げた水の味がこんなにも呼び合わなかったのかもしれない。

 

2013.5.22 杉山幹夫