「呑まれるよ??」

  私の初めての総合実践での活動は、「銀座はちみつフェスタ」への参加でした。

 はちみつに関わりたくて挑戦したはちみつフェスタでしたが、メンバー選抜の面接のとき担当の先生方三人から厳しい言葉をもらいました。 

 「今のままでは銀座に勝てない」

 「銀座に呑まれる」

 「この面接の状態で接客なんてできない」

 メンバーとして選ばれているはずなのに全く嬉しくもなく、ただ呆然と面接の結果を聞いていました。

 「部活で販売実習をしていているのに。先生たちが相手だったから喋れなかっただけなのに。」と、不満ばかりで結局銀座へ出発ギリギリまで作業ができず、「これでは本当に先生たちの言っていた通りになってしまう。」と悔しく、あわてて作業を始めました。

 銀座の会場では周りは販売・営業慣れしたプロ集団。海外代表の出店者もいます。その中で高校生は自分たち大通高校だけ。ディスプレイやパネル、接客の勢いなど全て周りのほうが優れているに決まっています。しかし、「自分たちのはちみつには前年日本一を取ったという強みがある。」それだけを頼りに接客をしました。地元で販売をするのと違い、足りないものや、必要なものは、自ら現場で作らなければいけません。急遽販売をすることになったSAVON de SIESTAさんとのコラボ商品と遊語部のエコラップ、ふたつのポップを作りました。もちろん販売の現場でポップなどを作っているところはどこもありません。恥ずかしいけれど、作るしかないので周りからあまり見られないようにハサミを動かしました。

 三日間の販売結果、生徒だけで180本を売り切り、二年前の記録を軽く超えることができたことは自分たちが接客をする自信をもてるようになれた、その大きな一歩です。

 その後、高校生チャレンジグルメコンテストや、オータムフェスト、丸井今井での甘酒販売実習などにも参加をしましたが、その中のどれよりも、一番「最初の悔しさから得られた最後の達成感」が大きかった活動が銀座はちみつフェスタでした。

 買って行かれるお客様から

 「ここの蜂蜜がほしくて来たのよ」

 「また来年も出店してほしい」

 と、うれしい言葉をいただきました。自分たちの高校の蜂蜜が、私は直接養蜂に関わっているわけではないけれど、一人でも多くの人に必要とされているということが 今まであまり気にしたことがなかったことを悔やむほど、誇れる一つになりました。

「参加しました」?

 私は高校に入学した当初はこんなに自分が授業で道外に出て大通高校を売りに行くとは想像もしていませんでした。しかし、いざ総合実践という授業を履修し「販売実習」「チャレンジ」という文字を見ると私の好奇心が

 「参加しろ!」

 と叫びます。好奇心がそう言うならと参加を決めますがなかなかミーティングに参加できません。ほかのメンバーに任せきりで、はたして自分はこのプログラムに胸を張って「参加しました」と言えるのだろうか。参加していたのは授業とプログラムが始動してからコンテスト当日まで繰り返し行われたミーティングの中の、最初の数回のみ。

 「高校生チャレンジグルメコンテスト」と呼ばれるそのコンテストは道内の高校生たちがその地域独自のメニューを考え、レシピを考案し、地元企業さんと協力をして「地域を知る」「社会を知る」をテーマに大賞を争うもの。

 大賞を目指して頑張っている先輩方や先生方に、コンテスト前最後の貴重な、ポップづくりやプレゼンを考えるミーティングに参加をしていない私を参加生徒の一人として認識してもらうにはあまりにも恥ずかしく、申し訳ない気持ちでした。しかし、先輩方はそんな私にもプレゼン時の資料渡しという役割を当ててくださいました。その時の先輩方の優しさは本当にありがたかったです。

 まだ自分の中で、参加したと胸を張れるかどうか自信を持てきれてはいませんが、結果として「大賞」という賞を関係者の方々に贈れた、一つの力になれていたら私の好奇心はきっと間違った選択をしなかったのだと信じることができると思います。

 「立派なのは」?

 総合実践を通して、ある“モノ”の大切さ・立派さを感じました。それは

 「モチベーション」

 そして

 「褒めること」

 です。

 「立派なのは実力じゃない。努力を続けられるモチベーション。そしてそれを褒めること。」

 もともと備わっている実力を評価するのではなく、苦手ななりに努力を続けることのできるモチベーションを評価してあげることこそ、相手のモチベーションに繋がる。

 販売実習の接客。決して全員が全員完璧にできるわけではありません。人と話すことが苦手な子、話したいけどうまく言葉が出てこない子。そうした苦手意識を持つ子達でも続けようと思えるモチベーションはあるはずです。

 十人十色の実力を持っていて、十人十色のモチベーションを持っています。お互いを尊重し、理解し合うことで自らの視野も広がります。そうした小さな心遣いが、やがて高校を卒業し自立していく私たちに最も勇気を与えてくれる一つなのではないか。そう考えることができるようになりました。

 SAVON de SIESTAの附柴さんは商品のアイディアを考えるときは三つのことを意識していると仰っていました。

 ① よく自分の身の回りを観察すること

 ② 自分自身の体験

 ③ 自然の中にもヒントを探す

 アイディアというのは一つの“モノ”例えば、色やデザインや形を指す言葉ではないと思います。「商品と人・地域と人を繋ぐ」「価値を伝える」「ストーリーを一緒に輸出」どれも「発信する」というアイディアです。そしてそのアイディアを知るきっかけになったのがこの総合実践の授業でした。

 

 「視野が広がる。」

 個性豊かな仲間と出会うので新しい発見があった。

 「世界が広がる。」

 たくさんの地元企業さんや地方企業さんとかかわる機会が多いので様々な職種、立場の方と出会えた。

 「知識が増える。」

 言葉や考え方、自分にはなかった新しい情報が手に入った。

 「感情が増える。」

 様々なプロジェクトに参加することで仲間との感情の共有ができ、感情の振り幅が大きくなった。

 

 私にとって総合実践とは二つの“広がる”と、二つの“増える”を得ることができた、今年一番の特別な授業です。