作成:中小企業診断士田島誠也
参照:「業種別審査事典」中小企業診断士協会
「中小企業の財務指標」中小企業庁

 

こちらで 商品開発と価格決定を学ぶ を記述

 大通高校で行われた商品開発。例えば自分たちでミツバチを育てて、蜂蜜を採るところから蜂蜜製品の開発、製造、販売に生徒達がすべてに主体的に関わります。
 そのなかで、価格設置を生徒と先生が真剣に議論しました。そのときに、札幌市が進める札幌の地域ブランド「札幌スタイル」において、登録企業に推奨した価格決定の考え方の事例を参考にしたと言います。
 製造業、卸、小売の流通業の全てのコストと利益を一つの商品の価格を分割して考えるスタイルが役に立ったそうです。

 

生徒達が自分で価格を決めて、しっかり売る


 西野教諭

 

 販売価格をしっかり自分たちで考えることにより、生徒達の販売実習時の責任感がグンと高まった
 

 大通高校での総合実践の授業で、商品の販売価格を決める際、商業は商品を外部から仕入れて販売するので、仕入値=原価。特に原価計算は必要ないと私自身も考えていました。ところが、蜂蜜瓶詰めを販売することになり、屋上で養蜂しているということから仕入先はありません。市場価格を生徒とPCで調べ、150gで1500円〜2000円とわかった時には生徒からは「高い!」「売れない!!」のオンパレード。

始めに「じゃいくらなら売れる?」と質問すると「400円〜500円」。ひどいのは「100円」でした。

 

 このとき学生時代に自主的なインターンシップで参加させてもらって、横目で見ていた札幌スタイルのホームページ編集会議を思い出しました。「販売価格 札幌スタイル」で検索したのを覚えています。価格設定の考え方/札幌市
 

 生徒達には、なぜ「少量なのに1000円以上の価格設定で、しかも買うお客さんがいるのか」について札幌スタイルの販売価格の内訳例を参考に、似たような表を板書して考えさせることにしました。

 正直私も国産蜂蜜の適正な価格や価値がよくわからなかったので、札幌地下街にある、道産商品を扱うお店、きたキッチンに市場調査へ行きました。パシャパシャ写真を撮って注意される始末…..。


  生徒達に「仕入値=原価」というと「高い!」というので、価格内訳表の詳細な内訳を参考にして、原価は商品を製造する為に要した費用と説明しました。そうすると生徒達は、巣枠や薬品、瓶やラベル、実際に養蜂に関わったボランティアや理科講座受講生徒の労力、手袋からつなぎまで、さまざまな費用が 実際であればかかっていることを意識しました。生徒達の考える販売価格が200円アップします。この段階で700円〜800円。



人件費を考えるのは難しい。消費者から事業者の視点に変化し、より正しい価格の設定へ
 

 実際、販売個数は予測でしか設定できていません。さらに一般管理費と販売費を加えて考えてみました。難しかったのが人件費です。何個売れるかで、商品一つあたりにかかる人権費は大きく変わるので、正確に計算できていませんが、養蜂担当教員に確認したところ「1個あたり500円程度でしょうか」という回答をもらました。本来ここをしっかり計算できるとよりリアルですね。そして、広告や支払われることのない販売にかかる賃金。賃金の話では生徒から「給料払ってよ」と強く言われ大変でした。

 

 こんなことを繰り返すうちに最終的に1年目は900円という販売価格になりました。それでも市場価格より安く販売したのは、私も含めて生徒達の「売れるのか」という不安を拭いきれなかったからです。きっと興行的な大量生産の原価を計算したり、手作りで、注文に応じてつくる場合の原価を計算する授業で勉強した後に価格設定の授業をすると、より適正な価格を考えられるのではないでしょうか。単位を生徒が自由に選ぶ本校ではなかなか難しいです。価格設定表にある在庫管理に関わる危険負担や金利負担については正直触れることができていません。
 

 私が大通高校に赴任する前の学校で原価計算を教えていたときは、生徒に原価計算のイメージを質問したところ、教科書をパラパラめくって内容を確認した生徒が「製品が作られるのにいくらかかったか計算するんですよね」と答えま した。帳簿につけるだけならそれでいいのですが、出来るだけコストを抑えていい製品をつくることを学んでもらうために何かイメージできる例がないとなかなか理解が深まらないことに気がつきました。自活していない生徒達にコスト管理の視点を持ってほしかったので、より身近に原価計算を考えるように、原価計算期間を1ヶ月で考えて、各自の家の実際の食費と予算を親に訊いてきてもらうような工夫をしていました。おなじ美味しいお鍋でも、材料で随分原価がちがいます。一ヶ月にすると随分大きな差になるわけですので、おかあさんがお買い物でどんな工夫をしているかを訊いてもらったわけです。お母さんからは「子どもに、節約しなきゃだめだといれれちゃった笑」と言われるくらい、生徒は実感をもって取り組んでいたようです。

 

 



各設定の考え方/札幌市には以下のような順序で説明されています

(札幌市のサイトは2020年に削除されましたので、上のリンクは切れています)


1企画・開発・生産・出荷に必要な経費を洗い出す
(企画・開発時) 市場調査費、研究開発費、デザイン費、試作費 など
(生産時) 材料費、印刷費、梱包資材費、光熱費、運送費、広告宣伝費 など

2商品の管理に必要な経費を洗い出す
在庫管理費、金利負担など


3企画・営業・販売などを考慮した適正な人件費を計算する
人件費は、「利益」ではなく「必要経費」です。安定した収入を確保し、継続的に事業を実施していく上で必要なだけの人件費(給与+通勤費+福利厚生費など)を計算してください。

4その他の固定費(一般管理費等)も合わせて計算する
このほかにも、事務所やオフィス機器の賃貸費用、電話代や切手代などの通信費、インターネット回線の利用料、各種税や法定福利費などの保険料など、製品生産とは関係なく必要となる人件費以外の固定費があります。

以上の1〜4迄が製造原価と利益で、販売価格も作り手側で決める場合には、消費者の手元に届くまで製品を届けてくれる卸売業、小売業の手数料も計算に入れて決定する必要があります。

5流通経費を上乗せして販売価格を決める
消費者の手元に届くまで製品を届けてくれる卸売業、小売業の手数料も計算に入れて決定する必要があります。出荷価格の倍程度の価格が、一般流通を経由した際の販売価格となるというのが、一つの目安になると言えます。卸売、小売は、商品を売るための専門的なノウハウと、そのための場所を生産者に提供します。

 

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