大通高校の実践的な科目設定


 大通高校の教育課程には様々な教科・科目があります。大きな特色として、学ぶ人の興味・関心、身に付けたい技能、そしてめざしたい進路などに応じて「国際・人文系」「環境・自然系」「商業・ビジネス系」「情報・マルチメディア系」「生活・福祉系」に分類されます。

身近な題材を大切に商業を学ぶ

 商業・ビジネス系には、「ビジネス基礎」「情報処理」「簿記」「会計」「文書デザイン」「よくわかる商業と経済」「総合実践」があります。商業の対象は簡単にいえば、「人、お金、物(商品)・サービス、情報」で、家庭、学校、日常生活のなかでもきっと役に立ちますよ。

 

私が担当する商業という教科を例に、大通高校でどんな勉強ができるか紹介しましょう。

 

「 よくわかる商業と経済 」という科目は、マーケティングを基盤にしながら生徒の「 ものの見方や考え方 」を 育むことに重点を置きます。

教科書に縛られない「 学校設定科目 」です。

“ マーケティング ”をキーワードにしてネット検索すると 7000 万件くらいはヒットするはずです。しかし、これだけのことでマーケティングを理解できるなら、わざわざ学校で学ぶ必要なんてないですよね。

マーケティングは「 考える技術 」です。その技術とセンスを磨みがくために、時には外へ出て実際の街やお店を見て肌で感じる学び方も必要です。企業の方からリアルな話を聞く学び方もあります。

 

日頃、何気なく使っている割り箸を例に考えてみます。

「 そもそも割り箸を考えたのは誰? 」 「 割り箸を使う日本の文化とは?」 「 割り箸づくりで生計を立てている人はいるの? 」

「 原料費はいくら? 」 「 人件費・工賃はいくら? 」「 仕入れ値は? 卸値は? 」など、多くのことが頭の中に浮かんできます。

「 使用済ずみの割り箸に再生の道はないのか? 」 「 森林が伐採ばっさいされ環境保護や緑化運動が叫ばれているけど、割り箸はやめたほうがいいの? 」 と、環境問題として議論されることもあります。「 割り箸は資源の無駄む だづかい 」 と 「 割り箸は世の中のためになっている 」 という対立する二つの考えを、マーケティングでは科学的に分析し、より最適な解かいを求めようと努力します。

 

「 割り箸しは資源の無駄づかいではない 」 と考える根拠は? 森林を健全に保つには 植 林した木の 80%近くを間伐します(木を間引くこと)。間伐しないと木同士が競合し、根が十分に張らず幹みきも成長できません。また、一方では伐採し過ぎると、河川の増水、土砂災害を防止する森林の保水調整機能が損そこなわれます。間伐することで、労働とお金を生み出し経済が動いているのは事実です。割り箸や爪楊枝の製造もそうでしょう。

つまり、環境と経済の両面からみて「 割り箸は無駄遣むだづかいではない 」という考えも一理あります。

しかし、実際のところ、環境問題に関わっては実に多くの見解があり、調べてみて初めて議論の難しさを感じることがわかります。「 結局、割り箸は使い終わったら廃棄され 焼 却

され灰になるじゃないか。そもそもエコ(ecology)ってなんだ? 」

 

割り箸ひとつとっても多様な見解が出てくるのですから、世の中にあるすべてのモノやコトを対象にするマーケティングは、無限の広がりがあるといえるでしょう。

私たちはいつも モノ や コト に対して何かを感じ何かを働きかけています。「 これ、好

き!」 「 おいしい! 」 「 もっとこうだったらいいのに 」 と、さまざまなモノやコト(サービス)に対してお金を支払い、評価し感想を述べています。

マーケティングはそうした「 人の心 」に関わることも研究対象にします。授業では消費者心理や購買心理を学び、人が心に刺激を受けたとき、どのように行動するのかを考えます。こんな視点で勉強すると楽しみが倍増しますよね。

 


(2008年2月1日・鈴木恵一)