札幌で国際水準の教育 について知っていることをぜひ教えてください

先生が知識を伝える」スタイルではなく、「生徒が課題を探究する」スタイルへと転換

 

札 幌市は国際標準の教育プログラムを2000年代から取り組んできた。一 方、開成高校を軸に中等一貫教育目指し、生徒が自分の関 心に突き動かされ、自ら気がついた課題を探求する、教員に一方的に教わるのではない教育の実践を始めた。なぜ、こんな価値感の転換ができたのだろう。市立札幌開成中等教育学校MYPコーディネーターの西村里史さんにお話を伺った。

「中 高一貫教育で、6年間じっくり生徒を向き合えるとしたら何ができるのか」。現場の教員、札幌市教育委員会、札幌市役所が、徹底した議論を繰り返したという。そのなかで、共通の認識に浮かび上がってきたのが「自ら課題をみつける生徒像」だった。西村さんは、英語教員のひとりとして、国際水準の教育プログラム構築に取り組んだ経験をもってこの議論に参加していた。

そこで、仲間の教員から国際バカロレアを紹介されることになる。これがオリジナルで考え抜いたものと違わないものであった。札幌の高校生た ちのために、現場の職員が考え抜いたものが、ジュネーブに本部を置く国際組織のもと、各国の大学に入学できる学習プログラムと制度と噛み合ってゆく。自ら課題探求をする生徒が、世界のどの大学に進むこともできる制度も利用できる状態が実現しようとしている。

政府文部科学省も、この国際バカロレアの重要性に気づき、全国の教育現場での導入を呼びかけ。文部科学省国際バカロレアのページを開いた とき、札幌はすでにその準備を整えていた。

 

校長の相沢克明さんは「国際標準の教育プログラムである「国際バカロレア(IB)」を活用して、6年間全ての授 業を、「先生が知識を伝える」スタイルではなく、「生徒が課題を探究する」スタイルへと転換し、公立中等教育学校で全国初となるIB認定校を目指していま す」と語っている。平成27年(2015年)4月、札幌市は市立開成中等教育学校を設立した。

 

 

<参考>

国際バカロレア/ International Baccalaureate

文部科学省は、世界の多様な価値観の中で活躍できる人材(グローバル人材)を養成することを掲げ、高校生と大学生の留学支援を積極的に推し進めている。その最たるものが世界中の大学の入学資格が得られる「 国際バカロレア( IB ) 」 だ。国際的な人材育成のための16~19歳向けプログラムを用い、高校の学習指導要領と並行履修し、卒業に必要な単位に算入できるプログラムの単位数を増やすなどして生徒や学校の負担を減らし、公立高校を中心に導入を促している。

国際バカロレアの認定を受けている学校は、平成27年6月10日現在、世界140以上の国・地域において4,211校。日本における認定校は34校。政府は認定校を2018年までに200校に増やす目標を掲げてきたが、現在の認定校は25校。このうち学校教育法1条が正規の学校と定める高校は12校にとどまり、多くはインターナショナルスクールだ。

文部科学省国際バカロレアの認定校のページ

国際バカロレアの教育プログラムとは一体いかなるものか。実際にどんな学習しているか、事例をみる。東京の玉川学園での経済の授業はこうだ。「 バターの価格が下がったらチーズとヨーグルトの価格はどう変わるか 」米国人講師の問いかけに対し、高校2年生に当たる11年生の生徒たちは流ちょうな英語で自身の考えを発表する。講師と生徒が意見をぶつけ合う50分授業。

こうした課題解決型の授業を行うと同時に、当然のことながら学習指導要領に沿った授業も同時に行わなければならない。数学や理科など世界中で学ぶ内容が共通しているものは、指導要領の科目への読み替えで授業数を減らす工夫ができるものの、国語や日本史などは別途授業をする必要がある。生徒は8時限目まで授業を受け、終了が午後5時過ぎなる日もあるそうだ。同プログラムを取得するには授業外でも毎日4~5時間は勉強させなければならず、生徒も教師も体力的にはきついとのこと。体力的なことも気になるが、プログラムの目的に合致した教材づくりや授業展開をする教師のスキルも重要だ。