機械塔時計 について知っていることをぜひ教えてください

 

日本最古の機械塔時計

この街には、重りが下がる力で動く鐘を備えた塔時計がある。電気や電池は一切使われていない。精巧に作られた機械と人の力が一緒になって初めて動く、日本最古の機械塔時計だ。正午には12回というように、1日156回。明治14年(1881)に、札幌農学校の武揚場に備え付けられてから主要とされる部品の一つも交換されることなく使われ続けている。時計と鐘を動かす為の重りはそれぞれにひとつずつあり、130余年前に豊平川から運ばれてきたものが現在でも使われているそうだ。約50㎏の重りが下がる力がドラムにかかり、各歯車に伝わることで時計が動く。軸にハンドルを取り付けて4日に1度56回巻き上げる。鐘を打つ方の重りはさらに重く、約150㎏を125回巻き上げないと、重りが床について動かなくなってしまう。鐘がひと打ち鳴るたびに、重りが1.6㎝下がる仕組みになっている為だ。(YouTube時計台巻き上げの説明を参考)

 

心に響く美しい音色

写真で見る米国の自由の鐘のように下の方でなぞえに裾を拡げている。その拡がり方といい勾配の曲線の具合といい、並々の匠人の手で鋳られたものでないことをその鐘は語っていた。―中略―

ことに冬、真昼間でも夕暮れのように天地が暗らみわたって、吹きまく吹雪のほかには何の物音もしないような時、風に揉みちぎられながら澄みきって響いてくるその音を聞くと、園の心は涼しくひき締った。そして熱いものを眼の中に感ずることさえあった。(有島武郎「星座」より)

 

 奏でのようだ

車や人の通りが激しく、どんな人でも時計を所有できる現代においても、札幌の機械塔時計は私たちと同じ時を刻み続けている。水面に輪が描かれていくような繊細な響きには、静を動に変えて行くシャープさも併せ持つ。響きと音との間。それはまるで奏でのようだ。時の流れは平坦ではない。だからこそ心が縛られるとき、この音を聴き入れてみたい。「吹きまく吹雪の他には何の物音もしないような時、風に揉みちぎられながら澄みきって響いてくるその音を聞くと、園の心は涼しくひき締った。」その心情が自分のものになりそうな気がする。

 

「2017/10/17 環」