近所の床屋さん

2013年11月8日 11:34

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小学校の正門の真ん前にある床屋さんに「子供110番」マーク。学校では、「危険を感じたとき、おなかが痛いとか、調子が悪くなったとき、けがをしたとき、お財布を落としたとき、家に連絡を取りたいとき、相談ごとがあるとき、いつでも入っておいで」という話になっている。

 

 

学校と連携をしてそんな風に子どもの「避難場所」を買って出てくれているお店屋さんは意外と多い。

 

 

ある床屋さんにお話を伺った

 

公園で遊んでいる年かさのお兄ちゃんを連れて帰る男の子がいた。

彼の自宅は床屋。

お父さんも、お母さんも働いている。誰を連れて帰っても、お客さんとして笑顔で迎えてくれるので、公園で仲良くなったお兄ちゃんを連れて帰ったのだ。

 

少年はその後も遊びに来るようになったが、何時になっても帰ろうとしないので、少年の母親と連絡をとる床屋さん。迎えにこないので、送り届けたり。さらに毎日のように遊びに来るようになった少年と、帰る時間、あいさつ、様々な約束をする。

 

釣りが好きな少年は、釣った魚を床屋さんに持ってくるようになった。

家に持って帰るとお母さんが嫌がるのだそうだ。

決して母親の悪口を言わないのだけれど、帰りたがらない。

釣った魚の大きさや、数を褒めると涙を流すほど喜ぶ少年。

 

営業時間を終わってから、一緒に川に魚を戻しに行ったこともあった。

 

床屋夫婦は、あえてその子の家庭に立ち入りはしないが、この子が常識的な時間に遊びに来る限り受け入れ、自分の息子の兄のように愛情をかけつづけ た。少年の母親とは、帰る時間のこと、彼の好きなことの話など、最低限必要なことは教え、自分の息子と向き合えるように支援した。

 

転校や不登校を繰り返した少年も、数年後、高卒認定を取り専門学校に通い始めた。車の整備士になるという。そのためにわざわざあいさつに来たとい う。「礼儀正しくなって、自分のことをちゃんと話してくれて、そのうえ、私たちのことを覚えていてくれて、うれしかったのよ」と床屋の奥さんはいい、大将 はニヤッとするだけ。

 

巨大な街札幌、でも小学校区単位の地域は田舎町と同じ。子供を守るおじさん、おばさんがいる。いつも大人がいて灯りのついている個人経営のお店、コンビニエンスストアなど、子どものよりどころとして機能しているお店がある。 


2013.11.8 杉山幹夫