市立札幌大通高校ミツバチプロジェクト

 

 

 

趣 旨

学校内部での各教科間の関わりと、高校と幼稚園との関わり、地域のイベントへの参加や、近隣への蜜源植物の苗や種の配布などで地域への還元を考え、「環境」をキーワードとして、学校と地域社会との関係をより良くし、さらに密にしていく。また、ミツバチの歴史、生態や自然界における役割、人間との関わりを再認識してもらい、改めてミツバチの可能性を見つめなおすことを目的とする。ミツバチの観察と採蜜を主な作業とし、さらに2012年度からは学校開発商品としてミツバチのロゴデザイン、及びパッケージデザイン、ハチミツを使用した商品開発を行っている。

 

 

具体的な取り組み

ミツバチを学校で飼うことは出来ないか」初めはそんな些細な一言から始まったプロジェクト。本校は、いくつかの条件はあるものの100を超える科目の中から生徒自身の興味関心で時間割を作成できる単位制の学校。今回のプロジェクトを立ち上げるにあたり、様々な教科が「ミツバチを教材」としてさまざまな活用方法を考えた。理科動物の生態-観察 飼育 採蜜・家庭科フードデザイン発達と保育-ハチミツを利用した調理、幼稚園と連携授業・情報商業科総合実践―ハチミツを使用した本校の商品を開発・芸術科工芸Ⅱ-巣箱、継箱、巣枠など木やミツロウで制作可能な道具作り幼稚園―教師の養蜂体験を聞かせること、家庭科との連携でのハチミツを使用したおやつ作りまた大通高校ちえりあ学社融合講座との連携を図り、外部講師を招いての講義も実施している。内容は、人間とミツバチの共生による、地域や世代を超えた共通認識を持つための取り組み「大通高校・中央幼稚園ミツバチプロジェクト」として夢づくり支援事業にも応募し採用された。地域との関連では地域のお祭りミニ大通おさんぽまつり(夏)への参加や、札幌で毎年開催される食の収穫祭「大通オータムフェスト」 ()になどさまざまなイベントに参加し、商品販売を行った。さらに現在他教科でもミツバチを題材にした授業を計画中。このプロセスを通じて教科を横断した授業の取り組みに挑戦している。

 

 

生産から販売 各授業での取り組み

                 各教科担当者コメント

1.  生 産

理 科 工 芸 動物の生態(学校設定科目)工芸(専門科目)   理科 渡部 友子教諭 芸術科 島田 正敏教諭

 飼育採蜜に関してはまず教員が慣れることから始め、慣れてきたころに授業での生徒参加や、外部ボランティア、PTAなどの協力によって行った。飼育は5月から9月までは週2~3回行い、9月から10月までは2週に1回程度行った。理科の授業(動物の生態)では、はじめにミツバチの生態について学び、その後ミツバチの飼育及び蜂蜜の採取。工芸の授業で採取した蜜蝋を使用した蜜蝋クリーム制作などを行った。はじめは蜂に近づくのを怖がる生徒もいたが、ミツバチの生態を学ぶに連れ、蜂との関わり方や安全な採蜜の方法などを学び、意欲的に取り組んでいた。

2.  商品開発

 

商業科 総合実践(専門科目) 商業・情報科 西野 功泰教諭

 

 商業の授業(総合実践)では、7月からスタートする販売実習で(コンサドーレ試合会場食べる・大切フェスティバルinつどーむ・毎年秋にオータムフェスト大通公園4丁目会場で行われるチャレンジオータムチャレンジグルメコンテスト座ろうテラスなど)自校オリジナルの商品の開発・販売を行った。日頃から実際の社会に役立つ実践的内容の学習を通じて、ビジネスに関する総合的な知識と技術の習得を目指している。具体的には4月のはじめからビジネスマナーや商品取引、マーケティングについての授業を行った。実践的な学習として、商品開発に関わる企業との交渉や、販売活動をする上でのマーケティング活動に力を入れた。生徒たちは初めてのことばかりで戸惑いもあったが、自分の考えたレシピが採用されたり、デザインの打ち合わせで自分の意見が反映されたりする中で自信や達成感を味わっていた。さらに、自分たちが手がけた商品メニューを販売するということで、実習期間中は常に商品陳列レイアウトやPOPに工夫を加え、少しでも多くのお客様に商品の価値を伝えようと努力していた。

 

家庭科フードデザイン・発達と保育 (専門科目)

 

 家庭科のフードデザインでは、商業科のオータムフェストやコンテストのお手伝い(マカロンの袋詰め、蜂蜜の瓶詰め)をした。調理実習のように自分たちが最終的に食べることになるものではなく、商品としてお金が関係してくることの責任、衛生面に配慮し、緊張感をもって活動できたと思う。また、発達と保育では、中央幼稚園の園児や大通すずらん保育園の園児とのホットケーキづくりをしましたが、ミツバチ、蜂蜜を通して共に食育についても考えることができた。園児との交流で幼児の発達を学ぶことができた。どちらの科目でも、生徒は意欲的であり、責任感も身についた

ように思う。

 

3.  加 工

 

芸 術書道Ⅰ・生活に生きる書 (専門科目・学校設定科目) 芸術科 宮﨑 洋司教諭

 

 書道の授業(書道Ⅰ・生活に活きる書)では、ハチミツのパッケージデザインの一部(商品名を考えたり、それを筆で書いたり)を担当した。

日頃から「創作作品制作」が中心の授業なので、今回もその一環として取り組めた。

まず、生徒にハチミツを試食させて、味・香り・食感・色などから商品の特徴やセールスポイントを考えさせ、商品名・パッケージデザイン(文字)のイメージ作りをさせた。その際、販売側・客側それぞれの視点から客観的に考えさせるよう指示した。また、今回に限って書的な表現だけではなくデザイン性を盛り込んだ作品作りにしても良いこととした。生徒達の様子は様々であった。「創造力」が問われる内容だけに、それを苦手とする一部の生徒はイメージ作りでつまずき、商品名に悩み、ほとんど筆を持てないまま授業を終えることとなった。しかしほとんどの生徒達は、自分の考案した商品名やパッケージデザインが商品となって店頭に並ぶかもしれないということで、それぞれが考えを深め、こだわり、悩みながらも楽しんで授業に取り組んでいた。81名の生徒による82点のパッケージデザインが完成し、それらを学校祭で展示、参観者による投票を行った。1番票数を集めた作品はわかりやすいネーミングと文字に隠された3つのミツバチに関わるデザインが採用の決め手となった。蜜の文字の中に、蜂の巣を表す六角形、べの文字の中には蜂の8の字ダンスを表現し、隊の文字、旁の部分はミツバチの体を表現している。

 

4.  販 売

 

商業科総合実践 (専門科目) 商業・情報科 西野 功泰教諭

 

 販売実習に向けての事前準備は、各担当者で分担して行った。本校は三部制の単位制のため、放課後がなく、担当ごとの準備進捗状況については、毎週火曜に行われる授業と生徒間のメールのやりとりで行われた。分業することで、各担当者毎の責任が明確になり、生徒間で締め切りを設け、自主的に作業を勧めていた。生徒の中にはメンバーで連絡を取り合い、授業の空き時間を使ってレシピや商品レイアウトを相談したり、ポスターを作成するという自主的な活動も見られた。印象に残っている出来事として、会議で授業に10分ほど遅れて教室に入ったとき、4年次の生徒が教室の前に立ち、生徒たちのみで授業が開始されていたことがあり大きな喜びを感じた。

 

担 当

事前準備

期間中

主 任

商品マニュアル作成

ブログ用商品データ作成

総括

副主任

商品マニュアル作成

ブログ用商品データ作成

主任補助

販売促進

販売商品レイアウト図作成

必要物品購入

接客マニュアル作成

販売商品レイアウト指示

会 計

販売商品レイアウト

必要物品購入

金庫管理

販売商品記録

物品管理

価格表示作成

在庫確認

商品管理

在庫確認・補充

その他

 

 

 

 販売実習では総合実践受講生徒に1日目にできたことをさらに発展させたり、さまざまな役割にチャレンジすることを目的として、一人につき最低2日間参加することを勧めている。生徒たちは、事前に学習した接客や、準備しておいた商品知識を使って商品をお客様に勧めていた。中には自主的に全日程に参加する生徒も現れるなど、取り組みへの前向きな姿勢が見られた。また、受講生には1年次生から4年次生が含まれており、自然と先輩と後輩の関係性が生まれ、先輩は後輩のサポートを積極的に行っていた。また、商品レイアウトやPOPの内容は、お客様の反応を見てさまざまなパターンが試された。

 

5.  広 報

 

メディア局外部メディア 

 

 メディア局では、普段の内検に加えて、チャレンジオータムなど、さまざまな活動がおこなわれる際に記録写真・映像を撮影したり、飼育状況、飼育者へ現在の問題点や今後の展望などの質問をブログ(odori-cc.net)で情報発信したりし、ミツバチの状態やミツバチプロジェクトにまつわる活動を校外へ知らせた。さらに、大通高校メディア局が持っているFMラジオ番組「大通つうしん」(当時FM76.5MHz、毎週木曜日16:0017:00、現在は局を移ってさっぽろ村ラジオFM81.3MHz 毎週土曜日16:0017:00IRODORI大通つうしん」として継続)にて、ミツバチプロジェクトについて番組内で逐次報告を行った。

その他、新聞や雑誌にも取り上げられ、オータムフェスト開催前からひろく商品やミツバチプロジェクトについて紹介された。

 期間中には、365日札幌で活躍している人を毎日紹介している「札幌人図鑑」というメディアで紹介された。

さまざまな広報活動の成果として、2月に行われた推薦入試の生徒の作文に、ミツバチプロジェクトに取り組みたくて本校を受験したという中学生もあらわれた。