腹いっぱい、おばちゃんのレモンステーキ食いてえ!

ガラムで、高校生の男の子が言う。

「おばちゃんのレモンステーキが食いてえ」

彼はアレルギーがあるので、普通のお店のレモンステーキを食べることができない。

母さんが言う

「ここだと、何も気にしないで、家族全員で同じもを食べて、美味しいねって言えるの」


郷土料理としてのレモンステーキ

この話をすると泣きそうな顔になる中川さん。

子供のアレギーを自分のせいだと思い込んだり、料理の工夫だけで疲れてしまっている自分を責めてしまったり。そんなお母さんたちを見ていられなかった。家族みんなで同じものをたべて笑ってほしかった。「うちの店に来たときは苦労を忘れて食事を楽しんでほしかと」という。

佐世保の時代屋さんが始めた「レモンステーキ」。
時代屋のサイトにはその誕生の記述がある。


昭和30年代の佐世保…。将来独立を夢見る料理人の兄弟が夕食時に料理談義に華を咲かせていた。「ステーキは日本人にはボリュームがありすぎてちょっと重い。」「じゃあ、すき焼き風にステーキをアレンジしてみてはどうか?」

 

レモンステーキこそをアレルギーフリーに

今じゃすっかりこの土地の郷土料理となり、家庭でも作られる。「レモンステーキってどこにでもあると思ってた」と地元の女子高生がいう。「レモンステーキは佐世保の名物」とかいう前に、フツーにメニューに書いてある。天丼やカツ丼や焼肉定食のように普通にレモンステーキ定食と。レモンステーキとは何かと説明されることはない。

甘い味付けにさっぱりとレモンの香り。ガラムの常連は「大人数での飲み会でレモンステーキが出る度に、ご飯の上に乗せて食べたくなる」という。

醤油の大豆やとろみの小麦にアレルギーがあると、このレモンステーキが食べられない。

「食べ盛りの子に、お腹いっぱい、みんなと同じ気持ちでレモンステーキを食べさせてやりたかったと。それが自分の仕事だと思ったと」。ガラムの店主の中川さん夫婦は味を分解して、すべての材料を入れ替え、オリジナルのレモンステーキと見紛う、いや、それ以上に旨いといわれるソース作りに成功した。

「あの子たちは、私たちに食べ物のことを真剣に考えさせてくれる天使です」という。

 

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