スプリング・ヴァレー・ブリュワリー

麒麟麦酒開源記念より

「安政五年徳川幕府が獨断専行して國を開くや歐米人續々として横濱に来りしが彼等は居留地と稱せらるゝ一區域の中に居住す天沼は此居留地に属し嫩草斜に連り喬木短樹其間を點綴し清泉滾々として崖下に湧き氣清く風軟かに一幅春園の畫の如し明治五年米人ダブリウ・コープランド此に工場を建設しスプリング・ヴァレー・ブリュワリーと稱して麦酒を醸造す是れ日本に於ける麦酒醸造の開源にして今日の麒麟麦酒株式會社の前身なりとす」

1872年（明治5年）ノルウエイ系のアメリカ人コープランドはノルウエイ人の夫人と死別した後、日本人と結婚し、安政条約によって定められた、居留地内（現在の横浜市中区千代崎町）あたりに麦酒工場を建てた。当時は居留地に住む欧米人達を相手にした生産である。当時天沼と呼ばれた谷は、植物が生い茂り、がけ下によい湧き水があったことがうかがえる。会社名のスプリングバレーは、この風景によって名付けられたと考えられている。コープランドは穏やかで人好きのする自分物、身長は高く、堂々としていたとされるが、彼の死去とともに、工場は売却され、ジャパン・ブリュワリー・コンパニー・’リミテッドに引き継がれる。

スプリングバレーブルワリーの跡地に設立されたジャパンブルワリー横浜山手工場（1885年頃）